エアガン
イジメを受けている人間の周りには、相談出来るような人物と言うのは限りなく少ない。
担任に言った所で状況を悪化させるだけになるのは勿論だし、イジメ側と言うのは大体結束力が硬いので注意を受けようとも「遊んでるだけ」と、本当に楽しそうに口を揃える。そして後から「告げ口したな」とイジメのレベルが上がる。
しかし人間と言うのは本当に面倒な生き物で、徐々に慣れて来る。イジメられる側も、勿論いじめる側も。要するに何もしなければ、それはそれでイジメのレベルは上がると言う事。
始めは丸めた自由帳を投げられるだけだった。それが徐々に投げ付けられるようになり、少しずつ硬いモノに変わり、ある時「輪ゴム」に変わった。
パチンと地味に痛い。
そして「輪ゴム攻撃」の頻度が上がり、やがてエアガンに変わる。
パァン!始めは遠くからで、徐々に至近距離へ。
ここまで、俺はただ只管耐えて「放っておいた」のだが、誰も飽きる事もなかったし、イジメもなくならなかった。
林間学習で出会った女性のお陰で視野は広がったが、実際俺はまだ小学生で、イジメ生徒が10人ばかし存在している2組の生徒である。
カチャ。
背中に突き付けられる銃口と、聞こえる数名の笑い声。
パァン!
カチャ。
立て続けに同じ場所にあてられる銃口、そしてさっきよりも大きく聞こえた笑い声。それに混じって「可哀想」とヘラヘラとした声。
イジメ側が可哀想と言う事は、コレが行き過ぎている行動だとの自覚があるという事だ。
だったら、やり返すのではなく怒れば良いのかも知れない。
立ち上がって回れ右をすると、エアガンを手に持った男子と目が合う。
怒ってはいるが特に睨む事もなく、俺は男子の腕を強めに叩き、床に落ちたエアガンを拾い上げ声を発する。
「これ、痛いから止めてくれる?」
男子は俺から声をかけられるのが余程癪に障ったのか、
「返せや泥棒!」
と、叩いてくる。
パァン!
床に向けて1発撃ち、
カチャ。
弾をセットして、トリガーに指をかけながら男子に銃口を向けた。何故なら俺は怒っていたのだから。
「もう止めろよ?」
その日から俺個人に向けてのイジメはなくなり、徐々に贔屓される側の生徒が贔屓されない側の生徒全体を馬鹿にする初めの状態に戻った。
結局、イジメに対するアドバイスは「やり返せ」が正解なのかも知れない。




