林間学習 最終日の自由時間
林間学習の自由時間中での事。
俺はお土産を買う為お店に向かった。当然、荷物を部屋に置きっ放しにしていたら何をされるか分からないので大きな鞄を背負ったままだ。
「大きな荷物背負って、重くない?」
店のオバサンがにこやかに話しかけてくる事数回。
愛想笑いを返す事数回。
すると、1人の女性が話しかけてきた。
「何でそんな荷物持ってんの?」
お店の人なのか、それともお客さんだったのかは分からないが、仏頂面をした高身長の格好良い雰囲気の女性だった。
自分とは雰囲気が全く違う女性。しかも初対面だというのに、俺は何故だか愛想笑いではなく、
「持っていないと、なくなるので」
と、正直に答えていた。すると女性は少しの時間を置いて、
「友達とは見ぃへんの?」
物凄く聞き慣れない言葉を発した。
友達?
店の中には多くの同級生がいて、喋ったりしながらお土産を選んでいる。しかし、俺の回りはどう見たって誰もない。
「友達いないので」
また、適当に誤魔化さないで正直な言葉が口から出た。
女性は店内を少し見渡しながら間を置き、本当ならばもう少し遠回しに言うべき事を、淡々と尋ねてきた。
「イジメられてるん?」
あまりもの直球にビックリして顔が上がる。
「え、あ……はい」
答えなければならない気がしていた。
「相手は1人?」
「いえ……」
イジメに対するアドバイスでもしたいのだろう。そう思いながら、頭の中で何を言われるのか予想を立てる。
放っておいたら良い。
やり返せ。
そんな言葉は散々聞いたし、無視しているというのにイジメはなくなる所か徐々に悪化している。やり返せと言うなら、その方法までちゃんと教えろ。
頭の中で勝手に熱くなっていた俺に対して、女性はまた質問をしてきた。
「1組の子とは仲良く出来へんの?」
1組の子はイジメには全くかかわって来ていないが、好意的な感じでもない。
「人見知りが酷いので……」
それに、そもそもナチュラルなボッチだから1人でいる事に対して寂しさとかを感じない。
「まだ小学生やろ?中学になったら、もっといっぱい人おるで?」
もっといっぱい人が増える。
女性は「人見知りを治せ」と言う意味で言ったのかも知れないが、俺は少し違った意味に捉えた。
イジメに関わっている2組の生徒は、20人いれば良い位だ。しかも直接手を下してくるのなんか10人もいない。大体は無視やら落書き程度。
クラスなら「ほぼ全員」。学年ならば「半数」。それが中学に行って、もっと生徒数が増えたらどんな少数に感じられるだろう?
取るに足らない事だと思えたのだ。




