林間学習 2日目の肝試し
俺は本当に心霊的な才能がない。
テレビで心霊写真特集なんかやっていると、間違い探しの感覚で凝視してみるのだが、ココだ、と思った所はゆっくりとアップになっていく画面からフェードアウトしていく上に、アップになった画面の何処が可笑しいのか分からない事もある程で、恐怖映像なんか「おわかりいただけただろうか」とか言われたって「なにが?」となる。流石に包丁が落ちてきたりとか、色が派手だったりすれば分かるのだが、地味なのは分からない。
もしもかなり恐ろしいものを目にしても「CGやろ」の魔法の呪文を唱える。
自分の目でガッツリ見なければ信じない!心霊番組を見終わっての感想は常にそんな感じだった。
小学校5年の時に行った林間学習2日目の、夜のレクレーション。行われたのは本物の墓場を使っての肝試しだった。
宿泊先が寺だったので、それはそれは立派で巨大な墓場だ。それを奥まで歩いて行かなければならない。
背の順に並ばされ、男女ペアにされ、1組ずつ。
2組で1番背の低かった俺の順番は1番最後。
1組は背の低い者から行き、2組は高い者から行くという訳の分からないルールによりそうなった。
2組は生徒が1人多い。つまり、最後の順番になってしまった俺は、1人なのだ。
「お墓場で怪我をしてはいけません。なのでゆっくりと歩いて行きなさい」
寺の人にそう背を押されて出発し、本当ならば全力で走って駆け抜けたい所、自分の足元を見ながら歩いた。すると、
「わっ!」
と言う声と共にカメラを構えたオッサンが出てきて、パシャッと記念写真を撮った。
なんだ、オバケ役の先生とかが所々に隠れているのか。
少しホッとして、後はコケないようにと前を向いて歩く。すると、前方に人影が見えてきた。
光源もないのに妙に目に付く2人、見えてるのだから「わっ!」とか言われても怖くないか、と余裕で歩き続け、フト違和感。
信じられないので目を凝らして、また違和感。
2人の人影は男女で、女の人は白い着物を着ていて、姿勢良く立っているのだが、お墓の途中位から生えてきているような感じで足元がない。男の人は武者姿でお墓の上にキレイに座っていて、しっかりと足があった。
幽霊って足がないんだっけ?じゃああの女の人は?いやいや、墓石から生えてる時点で可笑しい。それに横にいる武者も、何であんな所に座れるんだ?
歩き続けるとあの2人の目の前を通る事になるが、立ち止まったら俺が見えている事がバレてしまう。
立ち止まる訳にはいかない。
真下を向いて薄目で歩いて行くと、徐々に近付く2人の気配。
あまりの恐ろしさから、俺は心の中で必死に唱えた。かなり真剣に唱えた言葉は、
見えてない、ゴメンなさい。見えてない、ゴメンなさい。
こういう時ほど経文と言うのは出て来ないのである。




