やかんより
やかんに触ったらアカンよ!
アイロンに触ったらアカンで!
誰もが1度は親から注意されただろうこの言葉。
何故触ったら駄目なのかが分からなかった俺は母に、何故駄目なのか?と尋ねた。すると母は、
「熱いからや!」
と、怒った。
熱いとは、なんぞ?
沸かし過ぎた風呂の湯が熱い事は流石に分かっていたが、触るのも駄目だと言われれば興味が出ない訳がない。
どんな感じなのだろう?
日々積み重なって行く疑問、いつか触ってやろうと言う意欲。
そしてその時は訪れた。
祖母がやかんでお湯を沸かしていたのだ。
ダイニングで機会を伺っていると、湯が沸き、火を消して麦茶パックをやかんに放り込んだ祖母はそのままトイレに。
今だ!
勢い良く掌全体を使って触った。
これが熱いと言う事か!とか冷静に思える筈もなく。
ヒリヒリと痛い手を冷やしながら、随分と長い時間怒られてしまった。
そんな事が起きてから、祖母と母の注意の仕方が変わった。
「アイロンはやかんより熱いから触るな」
「油はやかんより危ないから触るな」
熱いから危険。と言う物の例えに、やかんより、が付くようになったのだ。




