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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 高学年

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147/485

 髪が長かった俺はクラスでかなり浮いた存在だっただろう。

 軽いイジメが始まる以前から「キモイ」と言われていたのだから、当然長い髪はイジられる事になった。

 ジョキン。

 後ろから髪を切る音がして振り返ると1束位切られている、と言う事も珍しくはなかった。

 しょっちゅう切られ不揃いな髪も、見慣れてくれば普通となり、切られても「あぁまたか」とショックすら受けなくなってくる。

 そんなある日、クラスに転校生がやってきた。

 2学期から俺達のクラスに入ってきた1人の児童は、大袈裟に胸を張ってかなり堂々とした振る舞いで黒板に自分で名前を書いた。

 「江口(仮名)です!」

 ハキハキと自己紹介する江口は、担任から見ても、クラスの皆から見ても「良い子」に見えた筈だ。

 こうして江口がクラスに馴染んで来ると、クラスメートからの指導が始まる。

 「アイツにこれを投げろ」

 教室の後ろから聞こえて来る声と、多少の笑い声。それに混じって困惑したような声も聞こえる。

 「え?でも……」

 「えぇからやれや」

 少しして背中に当たるボール。

 5年2組の教室内では、俺を軽くイジメる事が正解になっていたので、同じようにしなければ「こちら側の人間」になってしまう。

 江口は本当に申し訳なさそうな顔で俺にボールを投げたり、叩いたりしてきた。

 力加減もちゃんと押さえてくれていて、全く痛くなかった。寧ろ泣きそうな顔をしている江口がイジメられている様だと思った程だ。

 しかし、人間と言うのは徐々に慣れてくる生き物である。

 叩いても良い、と言う常識が出来上がっていくのだ。

 ある日の体育の授業前、靴を履き替えている俺の頭上で2人分の声が聞こえた。

 「ヤレ、ヤレ」

 そんな合図があって顔を強引に上げさせられる。

 江口が俺の髪を掴んで顔を上げさせているのだ。

 流石に痛いので顔が歪む。すると、江口は本当に楽しそうに微笑んだのだった。

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