バスツアー
夏休み中だったのか、それとも連休だったのか、とにかく夏のある時、俺達家族は従兄弟家族と合同で1泊2日のバスツアーに参加した。
祖母と、親父と、母と、姉、弟、俺。そして親父の妹、その旦那さん、長男、次男、長女の計11人。
親父と弟と俺で1部屋使う事になり、鍵を受け取って部屋に向かう。
長い廊下の突き当たりにある部屋のテーブルの上にはお茶菓子が置かれていたので、窓から見える綺麗な景色を眺めながらお茶でも。と思っていたのだが、自分達の部屋に荷物を置いた祖母と母と姉が俺達の部屋に入ってきて、お茶菓子を、お茶菓子をっ!
そんな中、従兄弟の長男が部屋にやって来ると、
「泳ぎに行こう」
と、姉だけを誘った。
しかし姉は、
「水着持って来てへんし」
と、軽く断る。その変わりに弟が、
「行く」
こうして長男と俺と弟は泳ぐ為に水着に着替えて部屋を飛び出した。
「海だー!」
寄せて返す波、何処までも続く水面に俺達兄弟のテンションは最高潮。
「ハハハ……浮き輪空気入れたるわ」
長男は笑うと、俺が持っていた浮き輪を手にとって何処かへ行き、結構な時間が経ってから戻ってきた。
その頃弟はもう泳ぎ始めていて、潜っては底から何かを持って来て浜にいる親父に自慢していた。
長男から浮き輪を受け取るなり水の中に入り、浮き輪が必要になる程の深さを求めて沖を目指す。
プカプカと流されるがまま進んでいると、真っ直ぐ進めば外国に着くのだろうか?なんて疑問が頭に浮かんだ。
疑問が浮かんだなら、試すしかない。
沖に向かって泳ぎ出すと、ボートに乗った人だったか、それとも泳いでいた人だったか、日に焼けた大人に戻るようにと注意を受けてしまった。
意気消沈してしまった俺は浜に戻ったのだが、
「あんな遠くまで行ったらアカンやろ!」
と、母にまで怒られてしまっては水に再び入ろうと言う気分でもなくなり、誰もいない部屋に戻って1人お茶を飲んで過ごした。
2日目。
また泳ぎに行きたいと言う弟の声で起きた俺は、今日帰らなアカンから駄目。と言う親父の声を聞きながら身支度を整え、弟を連れて浜に向かった。
泳ぎに行ったのではなく、ただの散歩。
のんびりと歩きながら、光を反射してキラキラと輝く水面を眺める。
「楽しかったな」
「うん」
こうして1泊2日のバスツアーを終えたのだが、俺は家に戻ってから衝撃的な事を聞いてしまった。
それは母の、他愛ない言葉。
「琵琶湖どうやった?」




