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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 高学年

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田舎の犬

 田舎には動物が沢山いた。

 田舎の家に向かう道中には養鶏所があったし、牛小屋もあったし、車1台が通れる細い道にも蛇や狸や猪が出たらしい。

 俺が直接見た事があるのは蛇と狸だけだったので、猪が出て来るのは稀なのだろう。

 そんな野生動物が多いからなのか、田舎の家では3匹の犬を飼っていた。

 中型犬程の大きさの雑種で、名前はエル、コロ、クロ。

 コロとクロはエルの子供で、コロとクロの父犬は猪を追い払う為に戦った勇敢な犬だったと聞いた事がある。

 そんな3匹は普段は鎖で繋がれているが、バァちゃんとジィちゃんが畑仕事をする間は鎖が解かれていた。

 自由に走り回る犬達は、時々玄関にまで駆け込んで来るが、部屋の中までは決して入って来ない行儀の良さだった。

 しかし、犬が怖い俺にとっては玄関までやって来ると言うだけでも落ち着かず、猫と一緒に犬が来ないか玄関の方向を凝視したものだ。

 因みに、猫に名前はなく、皆「名古屋の猫」と呼んでいた。

 そんな時、母の弟が俺達家族を買い物に誘った。

 山を降りた所にあるいつものスーパーではなく、山の途中にある地元の人しか知らないような小さな商店。

 当然親父は道が分からないので、オジサンの車を先頭にして商店に向かった。

 少し小さめで寂れたコンビニのような店は、食料品や生活用品と幅広い品揃えだったと思う。

 何を買ったのか正確には思い出せないが、お菓子やお酒のつまみを買って、帰ろうと店を出た所で、

 「SIN、ワシの車に乗りんさい」

 と、オジサンが声をかけてきた。

 来る時は弟がオジサンの車に乗っていたので、帰りは俺の番なのか。と、特に警戒もせずに車に乗り込む。

 山道を無言で、結構なスピードで走るオジサン。後ろには親父の車が見えていたので、俺はどうにか心細い思いを耐える事が出来ていたというのに、オジサンは少し笑いながら言うのだ。

 「SINのお父さん道分からんから、オジサンがここ曲がったら帰って来られんね」

 冗談なのか、本気なのか、オジサンは前を向いたまま運転を続ける。

 何故そんな事を声に出す?

 何をする気なんだ?

 怖いんですけど!

 結局オジサンは道なりに車を走らせて横道には入らなかったのだが、田舎の家に着いても後ろから来る筈の親父の車が来ない。

 まさか迷子に?道を曲がっていないと思っていたけど、実際は曲がっていた?

 その時、エルの鎖だけ解かれていたが、俺は構わずに家の外で親父が帰ってくるのを待った。

 トコトコとやってくる猫と、犬。

 帰って来なかったらどうしよう?

 そんな事を本気で心配して、ジンワリと泣く俺の傍に、猫と犬。

 なんだ、ちっとも怖い生き物ではないじゃないか。

 猫も、犬も、心細い時に隣にいてくれる優しい生き物じゃないか。

 こうして俺は犬に……ではなく、エルに慣れる事が出来たのだった。

 親父達はそれから2時間程してから無事に帰ってきた。弟に何をしていたのかを問うと、喫茶店に寄っていたらしい。

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