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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 高学年

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135/485

縮んだ鏡

 2階と3階の間にある踊り場。

 そこにある鏡の異変に恐れおののき、戦線離脱してしまった日の昼休みの事。

 徐々に恐怖心が薄れてきた事も手伝って、もう1回確認に行こう。と、思い立つまでに精神に受けたダメージは回復していた。

 丁度運動場に向かう集団がいたのでその後ろに続き、薄暗い階段までやって来る事は出来たのだが、踊り場を見下ろして言葉が出ない。

 鏡の前にはちゃんと化粧板がある。

 そんな訳ない。だって、朝は確かに鏡が見えてたじゃないか!

 恐怖ではなく焦りから踊り場に下り、化粧板を押したり叩いたりしてみたが、簡単に着脱可能な感じではない。

 そうか、きっと寝惚けていたんだ。そうだよ、そうじゃないと変だ。

 生徒の集団が不審な目で俺を見ながら階段を下りて行くから、俺も下り始めたものの、あんなにはっきりと見たのに寝惚けていたなんてやっぱり納得がいかない。

 何の気なしに振り返り、壁を見上げる俺の目には、数cmだけ出ている鏡に映る自分の顔が見えていた。

 パァーン!

 下の方から音がして、慌てて前を向きなおすと、何故か懐かしい気がした。この階段から見下ろす景色を見た気がした。

 いくらこの階段を避けているとは言っても、何度も上り下りした事があるのだから、何度だってこの景色は見ている筈なのに、懐かしい。

 そんな不思議な感覚が消えると、今度は急に物悲しい感情に襲われる。胸にポッカリと穴が開いたような。とはこう言う事を言うのだろう、悲しいのに泣くという感じはなくて、寂しいのか、胸を締め付けられると言うのか。

 なんなんだ?

 どうしてこんなに悲しい?

 こんな自分の感情が不思議で、同時に怖くて階段を急いで下りた。

 それから何日か経った時、給食当番になった為に給食室に向かう担任の後についてその階段を下りなければならなくなった。

 担任もいるし、他にも給食当番のクラスメートが大勢いたので恐怖は幾らか薄れていたのに、階段では俯いて出来るだけ足元しか見ないようにしていた。それでも鏡の前を通る時は床から数cmの鏡が見える筈なのだが、何もない。

 不思議に思って顔を上げて感じる激しい違和感。

 鏡は化粧板から数cm出た形でちゃんとそこに存在していた。しかし、数日前まで見えていた鏡は床から数cmだった。それは確かなのに、その時に見上げた鏡の見えている部分は、床から50cmは上の位置にあった。

 クラスメート達を呼び、鏡を指差してみたが特に変わった反応がない。

 「鏡、縮んだよな?」

 俺の問いかけに首を傾げるクラスメート達によると、ここはズットこの状態なのだという。

 訳が分からなくなり、自分の腰辺りが映っている鏡を眺める。

 緑の縁取りがあり、剥げていて茶色くなった所があって。

 「あれ?」

 俺、1度この鏡を見ていないか?

 幼稚園の頃、姉の参観日に母と小学校に来て、それで階段の途中にある鏡で帽子を被りなおした時に見た鏡だ。

 だとしたら、俺が今まで見てきた鏡はなんだったのだろう……。

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