キス魔2人目
前回、キス話を書いていて思い出したのは、我が家にもキス魔がいたと言う事だった。
それは、ベロンベロンに酔った時の親父だ。
それでも頬とか額とか紳士的なものがほとんどで、行き成り唇を奪ってくるような奇行はその日まではなかった。
同僚と飲みに行って帰ってきた親父は、その時点で既に出来上がっていたのだが、まだ寝るには早い時間だった事もあったからなのか、2階で母と飲みなおし始めた。
2階には姉も弟もいて、ぞれぞれの時間を過ごしていた。
「さちぃ~」
親父が姉を呼びつけるが、ここまで酔った親父がキス魔に豹変する事を知っていた姉は、宿題やってるからとサラッと拒否し、続いて呼ばれたのは俺。
完全に目まで合ってしまっているので行かない訳にもいかず、微妙な距離を開けた所で正座した。
「けーん」
近付いただけで満足したのか、続いて弟を呼んだ親父は、トコトコと近付いていく弟を完全にホールドし、弟の口、と言うより鼻から顎にかけてを口に含んだ。
「くしゃいー」
本気で嫌がる弟は半泣きになりながら親父の手を逃れ、ササッと俺の後ろに隠れた。そして再び親父の注目が俺に来てしまった。
しかし親父は視線を逸らすと水割りを口に含み、氷を口に含んでガリガリと食べ始めた。キス攻撃は終わったか?そう様子を見ているとガシッと腕を掴まれ、引き倒され。
キス恐怖症を爽快に通り越し、キスと言う単語にすら嫌悪感を抱くようになった瞬間となった。




