コウ君
絵本を作りましょう。と言う授業があった。
オリジナルでなければならず、皆かなり苦戦していたと思う。当然俺もかなり苦戦して、かなり時間をかけて完成させたのだが……完成させなきゃ良かったと思える事件が起きた。
絵本の内容は、1人の嘘吐き少年が真実を言う事の楽しさに気が付く。と言う何処にでもあるような感じだったのだが、その書き出しが「嘘吐きなコウ君」だった。
忘れもしないこの一文。
完成した絵本は後ろの棚の上に置かれ、誰でも自由に読む事が出来るようになっていて、隣のクラスからも読みに来る児童がいたり、逆に隣のクラスの絵本を読みに行く児童がいたりして、俺もこっそりと読みに行っていた。
そんな時、隣のクラスの男子児童が行き成り大声を上げた。
「これ書いた奴誰じゃ!」
男子児童が持っているのは俺の絵本。
「木場、あそこの奴」
「お前か!」
そう言って机の上に絵本を叩きつけた男子児童は、不機嫌そうに名札を見せてきて……コウ君だった。
「あ……ゴメン……」
とりあえず謝ってしまった俺。コウ君は、
「もう誰にも読ませるな!」
とだけ言って教室に戻っていった。
それからコウ君は顔を合わせる度に何かしら反応してくるようになった。とは言っても叩いてくるとか、暴言を吐いてくるとかそんな感じではなく、
「誰にも見せてへんやろな!?」
とか、
「木場~木場~♪」
とか。
嫌われているのか、それとも敵意を向けられていたのか。今でも良く分からない。




