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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 中学年

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老人会

 老人会の方々との交流があった。

 遠足で行ったんだったか、それとも授業で行ったんだったかは忘れたが、ご老人と遊ぶ。と言うナチュラルなボッチには少々ハードルの高い内容だった。

 折り紙を教えてもらっている児童がいたり、絵を描いたり、紙風船で遊んだり。そんな中で俺は黙々と駒作りをしていた。

 ご老人による指導も何もなく、ただ自分が知っている作り方で黙々と1人遊び。そうすると1人のご老人が俺に興味を示してくれて、テニスボールを1つ袋から取り出して手渡してくれた。

 この硬いボールでなにをしろと?

 しばらくテニスボールを前に考えていると、1人の児童が俺の持つ黄色いボールに気がついた。

 「それ何処にあったん?かして」

 何処にあったのかと聞きながらも寄越せと手を出してくる強引さに負けて手渡した時、ご老人は袋からいくつものテニスボールを取り出し、

 「まだまだいっぱいあるでー」

 と、非常に良い笑顔で周りの児童達に声をかけた。

 すると、折り紙をしていた児童も、絵を描いていた児童も皆テニスボールを手に入れようと集まってくる。

 「欲しいー」

 「頂戴」

 児童達はテニスボールを持って帰る気満々だったが、ご老人は、

 「良いよ良いよ、あげるから持っていきー」

 と、更に更に笑顔になり、

 「こうやって使ってみ」

 と、ボール遊びではなく、ボールを使ったマッサージを始めた。

 始めは真似をしてコロコロとマッサージをしていた児童達だったか、次第に外に出て投げて遊ぶようになった。

 部屋の中に残っているのはテニスボールを手に出来なかった児童と、そもそもテニスボールに興味を示さなかった児童が数名。

 ボールを奪われるだけ奪われたご老人は、寂しそうに袋を小さく折り畳み、俯いて目を閉じてしまった。

 最後の最後、転がっていたテニスボールを確保した俺はそれを持ち帰ったのだが、そのボールを見る度に寂しそうなご老人の姿が脳裏に浮かんできて、結局押入れの中に入れたまま1度も遊ばなかった。

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