カーテンの皺
小学4年の昼休み中、俺は初めて女子を泣かせてしまった。
泣かせてしまった女子はクラスの皆からはカヨと呼ばれていた女子で、窓側の席でまだ給食を食べていた。
「早く食べぇや」
と、友達に急かされ、既に涙目になっている。
そんな様子をボンヤリと眺めていると、カーテンの皺が丁度人に見えてきた。しかもかなり良いポーズである。
壁のシミや木目と違い、カーテンなので1度でも風に揺れると消えてしまう。
俺は急いで自由帳を開き、人の顔やポーズに見える皺を描き始めた。
見れば見るほど彼方此方に人が見えるので大忙しである。
そんな俺を不審に思ったのか、1人の女子が、
「カヨ描いてんの?」
と、言いながら自由帳を覗き込んできた。するとカヨがこっちを向いたので思わず、
「動かんとって」
と、声をかけた。
皆は間違いなく俺がカヨを描いていると思ったのだろう。また1人の女子が、
「全然ちゃうやん?」
と、声に出した。
絵に集中していた俺は、簡単に説明をした。
「カヨの後ろ(のカーテン)に見える人(のように見える皺)を描いてんねん」
と。




