キス魔
サクラ組には、物凄い積極的なユカちゃんと言う女児がいた。
苗字は思い出せないが、かなりハッキリと顔は覚えている。
色白の、クリっと大きな瞳の愛らしいユカちゃんは、サクラ組にいる全員のファーストキスの相手だ。
始めの犠牲者が誰だったのかは分からないが、2回や3回と被害に合う児童がいる中で俺は1回しか被害に合った事がない。しかもユカちゃん自身が記録していたキスした児童帳に俺の名前だけがない事で始めて気が付き、慌ててしたらしい。
ユカちゃんが言うには、俺の存在感が余りにもないので忘れていた、らしい。
それならそのまま忘れていてもらいたかった。
朝の自由時間、園内をフラフラと歩いていた俺の所にユカちゃんがやって来るなり、
「木場君で最後」
と抱き付いてきた。
迫りくる顔。
ボンヤリとしている頭でも分かったのは逃げなければならないと言う事。
「怖い!」
一言発して逃げる俺の後ろをユカちゃんは恐ろしい速さで追いかけてきた。
あまり早く走れない俺と、園内でトップクラスの運動神経を誇っていたユカちゃんとでは勝負になる筈もなく、アッと言う間に捕まって押し倒された。
「やったー、これで全員だー」
倒されたまま放置された俺がその後、キス恐怖性になったのは言うまでもない。




