キーホルダー 女子
学校に玩具は持ってきてはいけない。
そんな中でも許されているちょっとした遊び機能付きキーホルダー。
少し前にルーレットを壊してしまった俺は、その後にも色々とあったキーホルダー大会への参加を、持ち主により拒否され続けた。
人の物には触らない。
自分でもそう心に誓ったと言うのに、それは起きた。
その日、クラスの中でも大人しい方だった女子は、おみくじ付のキーホルダーをランドセルにつけて来ていた。
デジタルではなく、自分で振って出すタイプのおみくじで、やはり大吉を出した者が勝ち、と言うルールのもと朝から女子の周りには生徒が集まっていた。
どうしてだろうか、物凄くやりたくなった。
人の物に触る訳にはいかないのに、1回振りたい。
「あ……えっと……」
思い切って話しかけてみたのは放課後になってからだ。
階段を下りて行く女子は友達と喋っていたが、俺が話しかけると立ち止まり、
「触らんとって」
言われると思った事だったのに、もう1回。
「1回で良いから」
すると俺にランドセルを向けた女子は、ジッとしてくれた。なにも声はかけられていないけど、完全に了承されたものだと思った俺はおみくじに手を伸ばし、かなり気をつけながら振った。しかし地味に振っているせいなのか中々出て来ない。
もう少しだけ大きく振ってみよう。
「は?なに勝手に触ってんの!?」
え?許可をくれたんじゃなかったのか!?
怒りに任せて振り返ってきた女子。
ブチンと聞える音。
俺の掌にはおみくじ付のキーホルダー。
「ごめん……」
無言の女子はランドセルを振り回し、そのランドセルは俺の米神辺りに当たって眼鏡を奪って行った。
カシャン。
廊下を滑っていく眼鏡を見ながら俺は、普段大人しい子程怒ると怖いなぁ。と、妙にしみじみと思ったのだった。




