りんごジュース
腐りかけのリンゴを前にどうしようかと考えていた。
普通に丸かじりをしようにも1個を食べきる自信はないし、だからと言って包丁を使って綺麗に切るという自信もない。そもそも包丁の使用は禁止されていた。
丸齧りも包丁も駄目なら、すって絞ってジュースにすれば良いじゃないか!
水で洗ったリンゴをおろし器ですっていると2階から弟がやってきた。前回のふりかけからそんなに時間が空いてなかったからなのか、恐ろしく警戒しているようだった。
「リンゴすって絞るだけや」
「え?ジュース?」
パァと笑顔の弟が俺の隣に座り、徐々に小さくなっていくリンゴをキラキラとして目で見つめている。
こうして無事にすり終えたリンゴは、酸化が恐ろしく進んだ茶色をしていた。それでも変に言葉を知っていた俺は、
「無添加って事や」
とか言いながらキッチンペーパーで絞り作業に出ようとした。
ギュ~~~ボトッ。
キッチンペーパーは破れ、ボールの中にリンゴの絞りカスが落ちた。
やり直しか。
再びキッチンペーパーを用意する、今度は2枚重ねだ。
ギュ~~~ボトッ。
さっきよりはちゃんと絞れていたのに、最後の最後で破れて振り出しに戻る。
「早く飲みたい~」
「待ってや、今度は3枚重ねるから、これで大丈夫・・・」
ボトッ。
リンゴは、床に落ちた。




