転入園児
その日、いつものようにタコのようなオブジェの上で朝食発表の模範解答を考えようとしてグランドに出たのだが、その場所には既に誰かが座っていて、ジッと俺を見ていた。
誰だろう?
首を傾げるとソイツも一緒に首を傾げて見せた。
ハーフと言っても過言ではない程キリッとした目元、黙って座っているだけなのにタコのオブジェを、なんかもっと高価なものに見せてしまえるだけの雰囲気、俺はその時一瞬にして悟った。今日からあの場所はアイツの特等席になったのだと。
園内をフラ付いて入った教室では折り紙が置かれていた。
1枚手に取ってなにを作るでもなく適当に折っていると、隣に来た園児がやけに興味深そうに俺の手元を見ていた。なにかとんでもないものを折っているに違いない、そんな期待のこもった目で見つめられ、流石に1枚の折り紙をゆっくりと無駄にしているだけとは言い辛かった俺は、無理矢理に鶴を仕上げ、それを熱心に見てきていた園児にあげて外に出た。
タコの所にはまだアイツがいて、キョロキョロと色んな園児を見ているようだった。そして合った目。今度は向こうが先に首を傾げてきて、釣られて俺も首を傾げた。
「今日から皆のお友達になる宮元ちゃん(仮名)ですよー。皆仲良くねー」
先生が1時間目の前に紹介してきた奴は間違いなくタコの上にいた奴。
俺は宮元が女子だったと言う事よりも、
「宮元ちゃんは朝、何を食べたのかな?」
と、変則的に質問した先生に対しての、
「え?コーヒーとパン」
に衝撃を受けたのだった。




