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SHORTで、俺。  作者: SIN
~3歳
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最初の記憶

 1番古い記憶は、今の家に引っ越しする前の家の2階で、ボロイソファーの上に正座し、真っ暗な部屋の中砂嵐のテレビを見つめていた。と言うものだ。

 どうしてそんな状況だったのか分からない、と言う漠然とした記憶ではなく、ちゃんとした理由があった事も覚えている。

 今の家に引っ越して来たのは3歳頃の事なので、確実に3歳以前の記憶。

 その家は2階建てで、階段はかなり急だった。階段を上がりきった所に踊り場もなく突然ドアがあるという危険極まりない構造になっていて、それも押して開けるタイプではなく引いて開けるタイプ、あのドアは確実に住人を階段から落としにかかっていた。

 そんな階段を手すりに捕まりながら上り下りした記憶があるんだから良く生きていたなと自分で感心したりする。

 2階に上がって右手側には台所があった。くすんだ色の絨毯が敷かれた奥の部屋にはソファーと、その真正面にテレビがあって、俺はいつもそのソファーの真ん中に座って祖母とテレビを見ていた。

 こんなにもハッキリと思い出せる昔の家なのだが、1階部分が何をどうやっても思い出せない。

 階段を上り下りした記憶があるんだから1階を見ている筈なのに出てこない。その癖家の近くにコンビニがあった事なんかは覚えてて、隣に住んでいた子とよく遊んだ事や、家の前で焚き火をした事、雪ダルマを作ったのも覚えてる。

 そんな記憶の1番始め。

 真っ暗な部屋で砂嵐のテレビをソファーの上で正座して見ていた。

 あの当時、テレビを見る時は常に隣に祖母がいた。しかしこの記憶の中に祖母はいない。

 ソファーに座る時はテレビを見ると言う習慣。

 真っ暗な部屋の中、たった1人で砂嵐のテレビ。

 夜に目が覚めた俺は、テレビを見ようと祖母の真似をしてテレビを点けた。しかし砂嵐しか映らない。その理由をソファーに座ってないからだと結論付け、いつものように真ん中に座ったが砂嵐。寝転んでも砂嵐。

 何故映らないのかと思考を凝らした結果、行儀良くすれば良いのではないか?と思い付いた俺は、放送が終わって砂嵐になっているだけのテレビを相手に畏まった。その方法が正座だったという訳だ。


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