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勇者の大冒険(打ち切り)   作者: 鹿馬 真馬
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序章 なにがおこったの?

 ユリジェの獄中記は、魔女狩りの時代に捕らえられた人々が獄中の壁に密に書いていったものらしい。それから幾百年経ってようやく発見された。特別な記号を用いてあり、その解読には未だ至っていないが、獄中記の一部に英文字と記号を対応させているものが存在する。第二のロゼッタストーンと言うべきそれは、完全な状態ではないが、重要な証拠として我々を真実に導いてくれている。


……。


「何だよこれ。」


それはわたくしにもわかりません。




               勇者の大冒険








 話は変わるが、ここは中学校。今日も学生がいかにも中学生らしく廊下を走り回る。教室の中では女子がかたまって噂話をしたり、はしゃぎにはしゃいで突然奇声を上げるのもいる。男子はゲームの話ばかりする集団や、廊下で暴れているのもいる。多種多様の文化圏。大人のふりをして書店のR-18コーナーに忍び込んだり、小学生のふりをして電車賃をまけてもらう人までもいる。教師は大変だ。中には動物園から脱走した奴だっているかもしれないのに、教員免許の中には飼育員の資格までは含まれてはいないはずなのに、そして彼らの賃金は減少の一途をたどる。

 何に希望をもって生きようか。

そんな問いかけに、生徒は欠伸して答える。何の気兼ねもなく、のんびりとする十月のはじめである。


 お堅いのはこれぐらいにしよう


 部活動に打ち込めば、けがはする、コーチには叱られる、挙句の果てには掃除までさせられる。そういうのたいばつとかいうんじゃない? とか思うかもしれない。けど、そういう育ち方をしてきた人はそれが普通になるのだ。法律ぐらい守れ、赤信号で渡ったり、万引きをするのと変わらない。彼らには全く罪の意識がない。何がゆとりだ、ゆとりを批判する前に自分たちがいかに荒んでいたか自覚しろ!


 と、彼が考えているのかはさっぱりわからないが、彼が何を考えているのか、それは誰にも分らない。


 そんなこんなで大体のことが片付いて、少年たちは帰り道を歩く。

 

 そこでユリジェの話題が出た。


 ユリジェの獄中記は、ゲームの中で出てくるキーアイテムである。

 

 だが、特別な効果が何一つない。存在しているだけで、次のステージに進めるようになる。

 

 ネット上では製作者の陰謀だとかなんとか言われているが、そんなことは無い。


 と言った風に会話は流れ、夜月と健太の二人が残った。


 夜月は、薄暗くなった空の下、いつものつかみどころのない調子で


 「またあした。」


 とだけ言って、一人の帰途についた。


 何もかもいつもどおり。


 平凡な一日。


 夜月はいつも物静かだ。


 そしていつもは空を見上げる。

 

 暗くなろうが、曇りだろうが、空を見上げる。


 そこには大抵、月の光が見える。


 彼の名前の由来になった月があるからだ。


 今日は、星の光がやけに強い。


 彼はアスファルトのいやに黒いのを星座のように縫い合わせて、帰って行った。


 


 小さな声がやがて途絶える。


 その日は風がきつくて、雨上がりのせいで非常に寒くなっていた。


 さらに、風はきつくなる。砂埃が舞い始め、視界が悪くなる。


 まるで海岸にでも立っているみたいに。


 そのうち、足元のアスファルトまで茶色くなっていく。


 本当に住宅街だろうか。


 夜月が細めた目で辺りを確認した時、砂嵐は一層酷くなって、彼の視界を奪った。


              一方もう一人の方は



 健太は風が弱い間に家に着いた。彼は、言うまでもなく夜月の友達だ。根っからのゲーマー、それでいてどんな相手にも対等に話せる素晴らしい気質の持ち主である。友達が多く、夜月とはほぼ正反対、それゆえ夜月のことを気にかけている。それでいてゲーム好き。家に着くと靴を脱ぎ、階段を上って自分の部屋に行き、先ず本体の電源それから電気、上着をかけて、テレビをつけ、コントローラーを握って準備完了。あとは、一時間ゲームに集中する。宿題は、忘れる。

 この一連の流れが、スムーズに行かなくなった。

 彼の目は徐々にかすんでいく。こすってもこすっても、かすみは取れない。


「何だよこれ。」


そう言おうとした時、ふっと気が抜けて倒れた。彼にいったい何があったのだろうか、と思ったらすぐに立ち上がった。

「何だったんだよ今の……。」

彼は自分の部屋を見渡して何も変わっていないことを確認すると、ほっと一息ついた。

「疲れているだけかな。」

 ゲームの画面はメニューになっている。スタートボタンを押してゲームを再開出来なかった。

「何だよ! まったく……。」

彼はイラつきながら本体からコントローラーを引き抜いた。本体から黒煙が勢いよく上がる。

うあー! となっているうちに、窓から煙が流れ、視界は良くなっていく。

「……。」

彼は言葉を失くし、呆然としている。そして、彼の手には、勇者の剣が握られている。


                  「あれ、ここは……?」


彼はあたりを見渡した。そこは……。

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