1章 新学期突入! みんな反抗期だーー!!
「あ、雨が……。」
「降ってきた。」
教室から『回復の杖』を持ってきた健太と夜月。二人は顔を見合わせた。
「傘は」
「ない。」
「近くに人影は」
「ない。」
「つまり帰れそうに」
「ない。」
「って、そんな場合じゃないよな。普通にどうしようか。」
二人が帰るのを渋っていると、背後から声が聞こえる。
「相合傘~~!」
振り返ると、そこには優燈が現れた。彼女は下足室で傘を開いている。
「どう? 私と帰る~?」
彼女の提案に健太はビクッとした。
「いや、遠慮しとき……。」
「仕方ないな~。雨が上がるのを待っててあげる!」
「だから結構で……。」
健太の言葉を遮って夜月が言う。
「ハートが欠けてる。」
「あ! でも、私のハートは残念でしょ?」
「別にいらないし……。」
「でも、ハートよりもいいものあげる~。」
優燈が取り出したのは謎の石版だった。見たこともない文字が、縦に三列、横に二列の合計六文字が彫られていた。金箔の張られたその石板を、どうして彼女が。
「本当にくれるのか?」
「いいよ。」
こうして、彼らは謎の石版を手に入れたのだった。健太は石版を手にして思わず息をつく。
「すげぇ……。こんなもんどこで……。」
「作ったの!」
健太はシーンとした。
一方その頃。
尋箭は龍人の家に遊びに来ていた。二人は帰宅部に所属している。
「ん? 雨降ってきたか。」
「これじゃ帰れねえな。今日は泊まりか。」
「おい、勝手に決めんなよ。」
その後二人は黙り込んだ。何もする事がない。雨の音を聞くだけだった。窓からは何事もない平凡な街並みが続いている。住宅街の中にあって、かなり見晴らしのいい場所だから。
窓に雨が打ち付けて、そのうち流れるようにどしゃ降りになる。曇天の下は色彩が薄れ、灰色の海に、街が沈み込んだ。街灯の光が余計に眩しくなる。
「明日は学校休みだろ!」
尋箭は笑い飛ばした。
「休み、って明日は火曜日だろ?」
龍人があくびをする。
「相変わらずだな。お前は。」
「そうだ! 俺が休めば学校は休みだっ!!」
尋箭は無邪気に笑った。
「また怒られるぞ。」
龍人はそう言い残し、部屋から出て行った。
彼が向かったのは冷蔵庫の前だった。コップにお茶を注いで、飲み干した。誰も居ない、暗いダイニングの片隅で、うっすら光るのが見えた。龍人は誰かから連絡が来てるのに気づいた。
「誰から……。あいつか。」
龍人はため息をつく。
「読まなくていいか。」
そして、部屋に戻っていった。
「おー、遅かったな。」
「何やってんだよ。」
尋箭はゲームをしてた。龍人も笑うしかなかった。
「人の家のゲームを勝手にするか? ふつー。」
「ここにゲームがあるからだ。」
尋箭は崇高な理念を持った登山家の物まねをして言った。
「あっても遠慮するだろ。ふつー。」
と言いつつ、机の椅子に座って、龍人も画面を見てた。最近では珍しい横スクロールのシューティングゲーム。あっという間に一機減った。龍人は失笑する。
「下手だな!」
「うっせえ!」
尋箭は躍起になって連打する。が、移動し忘れて壁に激突する。
「バカだなー!」
「黙ってろって!!」
イライラした尋箭が見事なプレーを見せる。が、あえなくオールブルーになった。
「接触不良だな。」
龍人は爆笑した。尋箭は激昂した。壁に立てかけてある金属バットを担いで
「素振りしてくる」
と言い残し、ダイニングに向かった。
「仕方ないやつだな。」
龍人はゲーム機のコードをいじる。
「こいつも古いから……。」
ガシャンっっ!!!
「へ……!」
ダイニングから何か聞こえた。龍人は顔が真っ青になったが、すぐに駆け付けた。
「何してんだっ……!」
電気をつけると、そこには謎の兵士がいたのだ!
「わりぃ、変な奴が来てな!」
尋箭は敵と対峙する。龍人もそれに加わる。
「片付けが忙しそうだ。」
二人は同時に攻撃を仕掛けたが、敵は回避する。二人は家財に気を付けているのに対し、敵はお構いなしに戦闘するので、家の中が無茶苦茶になった。さらに、雷が鳴ったかと思うと、明かりが消えてしまった。
「停電!?」
暗くなった瞬間、尋箭は床に落ちているいろんなものに足元をすくわれた。そこに、敵の白刃が襲い掛かる。尋箭は咄嗟に体勢を変えたが、剣が尋箭の頬をかすめた。しかし、尋箭は切り返し、金属バットで敵を吹っ飛ばした。敵は窓ガラスを割って、道路に落ちた。
「大丈夫か?」
龍人が声をかけても尋箭は応答しなかった。頬を抑えている手をはなしてみると、何もなかった。龍人はため息をついた。
「ひどい奴だな、停電したし。無茶苦茶にしやがって。」
閃光が走る。音が鳴る。しばらくして明かりが灯る。
二人は衝撃を受けた
部屋には何も散らばっていなかったのだ!
「どうなってんだ?!」
龍人は驚きを隠せずにいるが、尋箭は対照的だった。
「学校に行くぞ。」
「なんでだよ!」
「誰かから連絡来てねえか。」
「来てたが、優燈からだ。」
尋箭は自分のを確認した。健太から来てた。
『敵が来た! 学校にきてくれ!』
「だとよ。」
疑念を持つ龍人と、尋箭は急いで学校に向かった。尋箭は龍人に半年前の出来事を伝えていった。にわかには信じがたいが、そういうこともあるんだと、自分に言い聞かせた龍人。二人が正門前前に着く頃には、すでに、彼らの学校は敵に包囲されていた。




