ようこそありす。
しつこいですが
文が下手くそです。
そこはあらかじめご了承ください。
走る。走る走る走る走る走る走る走る。
ここがどこだか分からないけれど、背中からやってくる恐怖から逃げるように走る。ただ、がむしゃらに前にむかって唯は走るしかなかった。
走る走る走る走る……ツンッ
急に唯の体が浮いた。小石につまずいたのだ。
つまずいたというより、投げられたように高く飛んでそのまま口をあんぐりと開けた植物の中にスッポリ入ってしまった。中は蒸し暑く青臭い。
そもそもどうしてこんなことになったのか。
たしか最後に覚えているのは…
懐かしい夢を見たんだ…。
「はるちゃんおそい!!」
一人の少女が遠くから走ってくる男の子に叫ぶ。
男の子は一冊の絵本を片手に息を切らしながら走ってくる。
「ごめんね。えほんをさがしてたの。」
「また、そのえほん??なんだっけ、『ふしぎなアリス』だっけ?」
「ちがうよ。『不思議の国のアリス』だよ。おかあさんにいつもよんでもらってるんだ。ぼくはまだ、もじがよめないから。えをみてるだけでもたのしいんだ〜。」
この絵本の話をするときのはるちゃんはとても楽しそうだ。
ふしぎの国とかアリスとかなんとかはよくわからないけれど、はるちゃんの楽しそうな笑顔を見るのは好きだった。
「そういえば、ゆいちゃん。」
「ん?なーに?」
「ぼくね、プレゼントもってきたんだ。みて、うさぎのストラップだよ。かばんとかにつけるんだって。ぼくのえほんにでてくるうさぎに、にてるんだ。」
「わぁ!うれしい!!ずーっとたいせつにする!」
とてもうれしかった。最高の一日だと思った。
なのに……
「…原…水原…ミズハラ!!!!!!!」
「う、わぁぁあぁあ!!!」
あわてて顔を上げると一番苦手な教師の顔があった。どうやら居眠りをしたらしい…この先生の授業で。
「いい、夢を見てたらしいな。私の授業よりもさぞかし楽しかっただろうね。よかったねぇ。」
こういう嫌味な先生はとっても苦手だ。
「あんたみたいにボケーっとしてるやつが『ありす事件』に巻き込まれるんだよ。」
「すいません…えっと…『ありす事件』ですか…??」
「まさか知らないの?さすが水原さん。」
唯は怒りを堪えていた。
「知らないです…。」
「ま、今は授業中だからね。自分で調べなさいね?授業中に調べたりしたらダメよ?水原ならやりかねないからなぁ…。」
教室がドッと笑いだす。うるさい。
「は…はぁ…。あはは…。」
(さんざん嫌味を言われただけって…。)
放課後、唯は携帯で『ありす事件』について調べていた。
どうやらありす事件とは女子高生が急にいなくなり二、三日後に森などでふっと姿を現したと思ったら訳の分からないことを言うという内容らしい。なにしろ「不思議の国に行ってきた。」「お茶会をしてきた。」などと絵本である不思議の国のアリスの内容の一部のようなことを言い出すのでその名前がついたらしい。
「ずいぶん、私も馬鹿にされたもんね…。」
あまり非現実的なことを信じない唯はあきれていた。
不思議の国のアリス…。
唯は携帯についているストラップを見た。
とてもとても大切な友達にもらったうさぎ…。たしかこれも不思議の国のアリスだった。
「はるちゃん、どこへ行っちゃったんだろう。まさか、はるちゃんも『ありす事件』とかに遭ってるの…?」
はるちゃんは、唯にストラップを渡した日に消えてしまった。
警察が、いくら探そうと見つからない。はるちゃんの両親も遠くへ引越し、はるちゃんに関するものはこのストラップしかない。
と思っていたら、ストラップのひもがプツリと切れた。
「あ、落ちちゃう!」
ちょうど目の前にマンホールが、あった。運悪くフタが開いている。マンホールの中に落ちそうになったストラップはキャッチできた。しかし…
「え、落ちる。おちる?!?!?!」
キャッチした瞬間足を滑らせて唯はマンホールの中へ落ちていった…。
「きゃぁぁあぁぁぁあぁあ!!!!」
マンホールの下はたしか…下水道とかがあったはず。そんな汚いところに落ちるなんて。そのわりには深いどこまでも落ちる。自分は死んでしまうのか。あまりの恐怖に唯の意識は途切れた…。
「それから…今の状況…か。とりあえず、この植物から抜けないと私食べられちゃう。」
口の方に手をかけたらすんなり脱出することができた。
するとすぐそこに見慣れぬ二人の男の子がいた…。
「何してんの、臭いし汚い。」
「え、これって女の子を産む植物とかだっけ?あれ?あはは。」
この出会いが幸と出るか不幸と出るかは、まだ分からない。
どうやら私は『ありす事件』の『ありす』になってしまったのかもしれない。