表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カノジョだけがセイシしたセカイ

作者: 中野火都

 カノジョだけがうごかない。

 信じられないことに、まるでカノジョの時間だけが止まったかのようにプッツリと、トツゼンうごかなくなってしまった。

 さっきまでみんなといっしょになってはしゃいでいたのに。さっきまでみんなとケラケラ笑いあっていたのに。そんなさっきまでの時間がウソだったかのように、カノジョはうごかなくなってしまった。セイシしてしまった。

 

 ピクリともしないカノジョをボクはただただ見つめることしかできない。そうしていることでいつかカノジョがまたうごきだすんじゃないかって、そんな気がして。でもそんなボクの気持ちをあざ笑うかのように決してカノジョがふたたびうごくことはなかった。

 心がドクドクとさわいでいる。ボクは多分あせっているのだと思う。このままではまずいことをボクは知っているのだ。

 ボクは助けをもとめるようにまわりの人たちに目をむけた。けれどかれらはボクとカノジョを見ては周囲の人たちとヒソヒソおしゃべりをするばかりで、だれもボクたちに近づこうとはしない。いや、かれらは知っていたのだ。今ボクたちに近づいてはいけないのだと。もしボクたちに近づこうものならメンドウなことになりかねないことを。


 絶望した。このセカイのどこにもボクの味方はいないのだと。

 カノジョはこんなにもそばにいるというのに、ぬくもりはどんどん遠くへ行ってしまう。


「おい! いいかげんにしろ!」

 いよいよしびれをきらしたかれらはボクをどなりはじめた。

「いつまでそうしてるつもりなんだ! さっさと片付けろよ!」「そうだそうだ! すこしはオレたちのことも考えろ!「さっさと終わらせなさいよ!」

 最初の一言を皮切りに、せきを切ったようにかれらはつぎつぎとボクをののしりだした。

 

 なぜこうもボクだけがせめられないといけないのか。なぜこうもボクだけが救われないのか。つい自分のフコウをのろってしまう。

 けれどかれらの言うことには一理あるのだ。たしかにいつまでもこうしているわけにはいかない。ケリはつけないといけないのだ。

 なごりおしくはあるが仕方あるまい。もうあきらめるよりほかはないのだ。ダイジョウブ。今回はダメだったけどボクにはまだ次がある。

 さあ全てを終わらせよう。


 ボクはカノジョから目をそむけ、ふりかえることなく、そして告げるようにこう言うのだ。


「だーるーまーさーんーがー――」

「はいタッチ。またコウタくんのオニね」


 ミクちゃんは笑顔でボクにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ