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ー幕間ー






空が夜闇に包まれ、静寂が支配している魔王城。


こんな夜更けに、赤い絨毯が敷き詰める廊下を苛立たしげに歩く老人の姿があった。


「おのれ……っ! リンは何をやっていたのだ……!」


綺麗に整っていた白髪も、今ではぐしゃぐしゃに乱れてしまっている。穏やかな笑みで包まれていた表情も、今では見る影もない。



この黒ローブを纏う老人の名はロウェイン。今日の朝、一人の若者を罠に陥れ歓喜にうち震えていた男だ。



だが、夕方にセーレ、彩香、ロードサイクロプスと共に談笑しながら帰ってきた所を目撃したことで、その目論見は淡くも崩れ去った。



「何故だ! 何故だ……っ!!」



こうしてロウェインは意味もなく深夜の城中を歩き回っていたのだった。


「……」


だが歩き回って疲れたのか、その歩みを止め、窓に映る暗闇を口許を歪めながら見つめた。


「まあいい……次の策を講じるまで」


「次はないぞ、ロウェイン」


「!?」



後ろを振り向くと、黒の鎧に身を包んだ一人の青年が立っていた。


廊下を照らす明かりの中でも際立った黒い髪を持った男。周りの光をすべて吸収しているかの如く深い、深い黒色だった。


青年はその端正な顔立ちに薄く笑みを浮かべた。



「ふっ、上級貴族とはいえ、よくもおめおめと相談役を名乗れたものだ。どこで魔王の話を聞いた?」


“魔王の話”とは黒田黒助――城の者は魔王と把握している者が記憶を喪失している件についてである。




「ぐっ……き、貴様は……!」


「さっさと答えろ」


青年はぶっきらぼうに言い放った。



「答える義務はな」


「そうか、死ね」


「――!? 待っ……」


無音。

しかしその光景は静寂とは程遠いものだった。


────無惨にも、老人の頭と胴体は永劫離れ離れになっていた。


鮮血が辺りに飛び散るが、青年は一滴の血を浴びることなく得物をしまった。


「情報はほぼ得ている。行き急いだな、老害」


「レイス殿もえげつないでござるなあ」


青年が天井に目を向け、


「ふっ、お前ほどじゃないさ」


「拙者は只の女の子忍者でござるよー?」


「まあいい。首尾はどうなっている?」


「バッチグーでござる。トリノキ町で蔓延っていた奴隷商人、汚職役員共々一網打尽でござる」


「そうか」


「まともな役員は町長ただ一人だったっていうのは少し笑えたでござるよ」


少し悲しげにそう告げた。


「人間なんざそんなもんさ」


「お主も人間でござろう」


女の子忍者は楽しげにそう言った。レイスの方も薄く笑みを浮かべ、


「知らん」


「ムフフ。まおーの側近は皆面白い者ばかりでござるなあ」


女の子忍者はまたも楽しげにそう言った。



「死体の処理、頼んだぞ」


「御意、でござる」

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