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魔王、はじめての拉致監禁《中編》




「まおー!まおー! あっちが繁華街でござる!」


「まあまあそう焦るなって」



おうおうおう!


おっぱい当たっとるぜい!!


今のこの状況を説明しますと、忍者を名乗るふつくしい女の子が俺の腕にしがみついて、人間の住む街を案内してくれている。という状況である。




羨ましかろう!!羨ましかろう!!



現に街を歩く冴えない男共の嫉妬の視線を絶賛受け取り中である。



この隣を楽しそうに歩いているくノ一はリンと言う。



俺の肩くらいの背丈のリンは健気に俺の腕を掴み、このトリノキ町を一生懸命に案内してくれている。




ひとまず、感想としては思ったより諸々の文化が発達していて驚いた、というが一番だ。



さっきまで住宅地を歩いていたので静かな町なんだなと思っていた。日本と比べるとやや田舎くらいかなと。




だが、タイルの敷き詰められた割りとお洒落な橋を渡った先には多くの店が立ち並んでいて、活気に満ち溢れていた。



ファンタジー世界のくせにちゃんとしてんだなあ、と上から目線で思ったりした。






さて、なんで俺がこんなおいしい事になってるかというとだな。



ロウェインから秘密の裏口の在処を伝授された俺は、見事セーレの目を掻い潜り、城を抜け出し、城から一番近い街であるトリノキ町へとやってきたわけだ。



裏口から城を出る際、待ち構えていたのがリン。道案内としてロウェインが用意してくれたのだ。



なんでもロウェインの話によると、リンは護衛に関してならば幹部級をも上回るトップクラスの才を持つとのこと。


まあ幹部級なんて俺は知らんがね。


そんなこたあーどーだっていい。



大事なのはおっぱいだ。おっと失敬、実力が伴っているかということである。


決しておっぱいではない。




しかし、かと言ってロウェインの話が真実だとしても、護衛が一人っていうのはさすがの俺も「それはどうよ?」と思ったのだが、


可愛らしい鈴の音のような声に反して、着崩した着物から覗かせるグラマラスな身体。しかもやけに丈の短い着物なので艶かしい足が丸見えでござる。


さらに、見る者全てを魅了するその天真爛漫な笑顔。


そしてなぜか初っ端から好感度Maxだとでもいうような懐き具合。



俺の思考力を半壊させるには十分すぎたッッッ!!!







「まおー、ここがこの町で一番大きい食事処でござるよ」


「ほうほう」



リンとデート気分な感じで色々街を案内されているうちに何だか腹が減ってきた俺は彼女に良い飯屋の案内を頼んでいた。


「あ、まおー! 席空いてるでござるー!」


「ハハ、おいおい待たないかハニー」


さながらcv.大塚明夫のようなダンディーボイスでリンを窘める。


店の扉の前でピョンピョン跳ねて可愛らしくアピールしている様が非常に愛らしい。



ん? よく見たらこの子……尻尾が生えてやがる!!ガッデム!!興奮するだろうがッ!!!


もしも、これに猫耳を付け加えれば……!


「ハァハァ」


周りの奴らが不審な目つきで見てきたようだが気のせいだろう。



木のドアを開け、店内に入ると華やかな香りが鼻をくすぐった。


どこのテーブルも木製で座り心地が悪そうかと思いきや、そうでもなかった。



店内の雰囲気も落ち着いた隠れ家のようで結構俺好み。



空いている席に座った俺は向かいに座ったリンに労ってやろうと声をかけた。


「悪くない」


「そうでござろう? ふふ、気に入ってくれて良かったでござる」



少し無愛想な感じになってしまったが、リンは頬を赤く染め、はにかんだ笑みを浮かべてくれた。



その時、俺の体に電流が走るッッッ!!!




一通りこのトリノキ町を案内され、説明を受けているうちに少しずつだがこの世界のことが理解できてきた。


まず、この世界には人間、魔族。この二つの種族が主な種族でお互いに対立している。


そして意外なことに、あまり魔族が優勢ではない。


主な魔族は俺のいる城に集中しており、他の魔族は各地に点々と存在しているようだ。


なんでも、昔あった戦争で魔族はド派手に負けたらしい。



そのせいで城の魔族以外の魔族達は皆生活がままならないとのこと。日々人間達から攻撃を受け、討伐されているらしい。



まあ俺にとっちゃどーでもいいことだが、それを話していたリンの顔が沈痛な面もちだったから一応神妙な顔つきで聞いていた。




そんでもってこのトリノキ町にも極少数だが魔族が生活しているらしい。


この町の町長とやらが、割と温厚な人のようで、人間に害を及ぼさないならと生活を許していたそうな。


でもほとんど奴隷のような扱いだそうだ。





なら、城から近いんだから軍勢引き連れてこの街をぶっ壊せばいいんじゃね?


そしたら魔族も救えるし、領土増えるし一石二鳥じゃね?


と思ったので聞いてみると、



「うーん。それはできないでござるよ」


「?」


俺がなんでと首を傾げると、リンは少し不満そうに口を尖らせる。



「まおーホントに記憶ないでござる?」


「ないでござる」


ホントはあるでござる。ついでに俺魔王違うでござる。



「はあ。まおーのせいなんでござるよ?」


「俺のせい?」


リンは頷き、


「まおーの発動している神器のおかげで、城から軍勢が出せないのでござる」


「神器……?」


なんのこっちゃ?





「うーん。今のまおーに言っても無駄無駄でござるね。また今度話すでござる」



「ふむ、そうか」


若干気になったが俺には知るべきことが山のようにありそうなので次の機会にしておくか。



「それよりー」


おや?


リンの瞳が妖しい光を帯び始めた。


・・・あれは人を誘惑する目だ。間違いない。


あれにはこの世界でも前の世界でも何度も引っかかってきた。


もう俺は、女の色香には惑わされないッッ!!!


どうせ後で痛い目にあうか、おいしい所で邪魔が入るかに決まっているからな!!!



「案内はもう終了でござるが、拙者、最後に行きたいところがあるでござる」



そう言ったリンに着いて行くこと20分。目の前には少しピンクな雰囲気が漂う宿屋があった。



はっ、騙されないぜ。


こいつはくノ一。どうせ、色仕掛けで男を惑わし、その後さくっと殺してしまうつもりだろう。


道理で都合がいいと思ったぜ。危ない危ない。ロウェインが良い奴だったから油断したが、まだこいつを信用するのはダメだな。うんうん。








俺が警戒態勢を敷いていると、妖艶な笑みを浮かべたリンが俺の元へ身を寄せ、その柔らかい身体を押し付け腕を絡ませてきた。


うほっ。


そして、突然差し出された人差し指が俺の胸をクネクネ撫で始め、極めつけに俺の耳元で甘い一言。




「……拙者、まおーと気持ちよくなりたいでござる。ダメでござるか……?」




ズキューーーーーン





「  是  非  と  も  」



お  願  い  し  ま  す  。

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