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序章
昔々、まだ地上に生命が存在しなかった頃。
神は大陸の中心に白い神殿を造り、そこに住んでいた。
たった一人での生活に退屈した神は森や川を創造し、やがて“人間”という、自身と同じように四肢を持つ生命体を生み出した。
神殿の北にある森の大樹からは、聡明で美しく気高いアダールを。
西の澄んだ小川からは、平和を愛する心優しきマカフを。
東に転がる大きな岩石からは、逞しく屈強なガンガルを。
そして南の黒い土からは、器用だが貪欲なフマンを。
彼らはそれぞれ国を築き、独自の文化を遺しながら何千年もの時をかけて発展していった。
しかし、彼らはあまりにも大きくなりすぎた。かつては神のものだったはずの大陸が今や、四つの種族に支配されている。神殿のある丘を除く全ての土地が、四つの国のどれかに属している。
次第に神の存在は小さなものとなり、もはや世界から忘れ去られようとしていた。
神はそれを嘆き悲しみ、まだ彼らを生み出す前の時代に戻るべく、神殿の中に扉を作った。未来、過去、あらゆる時代へと繋がる扉を。
そしてついに、世界は神を失った。