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短編集(詩やSSなど含む)

3月1日



 どれほどのことを残せたのかはわからない。

 自分がどれほどの人物なのかもまだ知らない。



 もうすぐ高校生生活を終えようとしている俺、丸井駆(まるいかける)は一人残った教室で夕暮れに染まっていく空を眺めていた。


 同級生やクラスメイト達はもうそれぞれに集まりに呼ばれているから、学校に残っている奴なんて俺くらいしかいないはず。もしかしたら後輩たちが部活などをしているかもしれないけど、それも空がオレンジ色に染まり始め校舎の中も静まり返っているので、この日の残滓を感じているのは自分だけなのかもしれない。


 そんな教室に響く足音。


コツコツ

 コツコツ

 コツコツ


 静かに、そして確実に近づいてくる足音


 コツコツ

  コツコツ……。

そして俺がいる教室の入り口付近で足音が止まる。

 がらがら


「あれ?」

「あ……」

 ドアを開け入ってきたのは、毎日のように見ていた顔で。


「まだいたのか丸井」

「……はい。すみませんもう出なくちゃですよね?」

「まぁ……そうなんだが……」

「準備します」

「…………」

 先生に一礼して、ガタガタと音を鳴らしながら椅子から立ち上がり、急いでカバンや花束、そして卒業証書を手に持つ。


「丸井……」

 そうして歩き出し、先生のいるドアへと向かっていき、先生の横をすり抜けようとしたとき、声をかけられた。


「はい……?」

「よく頑張ったな……。ずっとお前を見てきた。いろいろあったけど、良い思い出だ」

「はい。ご迷惑をおかけしました。先生がいなかったら……」

「そんなことはないぞ? 頑張ったのは丸井自身だ。もっと自分に自信を持っていい」

「……はい」

「じゃぁ気を付けて帰るんだぞ」

 先生に向け深く一礼をして、歩き出す。


「丸井!!」

 もうすぐ下へと降りていく階段に差し掛かろうとしたとき、先生から大きな声で呼び止められたので、少しだけ振り返る。


「卒業!! おめでとう!! 頑張れ!!」

「……はい!! 先生!! 本当にありがとうございました!!」

 先生は数回うなずくだけで、微笑んでくれる。


 俺はまた一礼してから今度こそ階段を下りていく。




 下駄箱から自分の靴を出し、それまではいていた内履きを鞄へとしまい、履き替えてとうとう校舎の外へと出た。振り返り校舎を見上げる。


 こうしてしっかりと校舎を見上げることはなったけど、入った時よりも少しだけ小さく感じる。


「駆!!」

「え?」

「遅いぃ~!!」

「……待ってたのか?」

 声を掛けられびっくりして振り返ると、いま、俺と付き合ってくれている恵美(えみ)の姿があった。俺の問いかけには返事をせずただただ俺に黙って微笑んでいる。


「みんなと行かなかったのか?」

「うん。今日だけは駆といたかったからね」

「そうか。それは悪かったな」

「ううん。いろいろあったものね……」

 俺と恵美は校舎を見上げる。


「かえろう?」

「……そうだな」

 しばらく見上げていたけど、恵美から声をかけられ、スッと目を閉じて返事を返す。

 恵美が先に歩き出し、俺がその後を追った。


 そうして正門までたどり着くと、トトっと先に駆け出した恵美が校門の少しだけ外に出て振り返り、俺が歩いて近づくのを待っている。


 そうして門の外へとたどり着くとにこりとおれに微笑んだ。


「駆、 卒業おめでとう!! 一緒に卒業できてうれしいよ!!」

「……ありがとぅ恵美。そして卒業おめでとう」

「ありがとう!!」

 俺の胸に飛び込んでくる満面の笑みをした恵美。

 ボスっと抱きとめた俺も、きっと同じような表情をしていると思う。



こうしてこの日、俺は学び舎を卒業したのだった――。


お読みいただいた皆様に感謝を!!


※私の地元では、卒業式は3月1日が主となっています。(公立高校ですが)

 なのでほかの地域では別日にしているところもあると思いますので、『卒業式は3月〇日ですよ?』とおっしゃられる方もいらっしゃるでしょうが、このままのタイトルで行きます。


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