3話 四畳半で二人暮らし
変な夢を見ていたみたいだ
目を覚ました時は目の前に2人の黒服の男が倒れていた
夢で抉れていたはずの傷跡は治っていて
いたはずの彼は服だけ置いてその場にはいなかった
あれの全部が夢だったのだろうか
もしもあの人だけが本物だったら
でも家族から逃げてるって言ってたもんな
現実だったとしてもきっとどこか別のところに行ったのだろう
ただ心残りだ
「もう少し、話してあげたかったな」
「なら当分困ることはないぞ少年」
うん?
後ろから話しかけられてような気がし振り返った
またあの人がいてあの人と話せる
そんな期待はすぐ驚きに変わった
そこには俺がいた
正確には俺と姿形そっくりの誰かだ
「え、あ、え、俺?俺がなんで俺の前に?」
「なんでって、私と少年は今マジの一心同体じゃないか」
いや待て待て
マジの一心同体?
何言っているんだ?
「君はあの男に腹を貫かれたろ、私の体じゃ治すのは無理だったからな少年の肉体を貸してもらったんだよ」
「え?どういう事?あんたは今俺の中にいるって事?」
話が理解できない
あれは夢じゃなかったのか
「つまりだ、いま私の魂は君の肉体に同居しているだよ」
は?え?は?
大きく深呼吸した
「あー…なんとなくだ、なんとなくわかったよ、てことは多重人格みたいな感じか」
「まぁ簡単にいうならね」
俺の肉体には今、鬼神の意思と俺の意思が二つある
そしてさっき黒服を倒し俺の腹を直したのは鬼神
今、困惑しまくっているのは俺だ
「4畳半の部屋に物知り魔術師お兄さんと2人暮らしだぞ、喜べよ」
「化け物長寿お爺さんだろ、あんたは間違いなく」
今日は疲れた、一回宿へ帰ろう
まだ雪は溶け切っていない森の中
今だに現実だと思えない
「てかなんでお前俺と話せてんだよ」
さっきから俺と鬼神はまるで普通に俺と話していたがよく考える意味がわからない
普通に話して普通に歩いているがさっぱり意味がわからん
「私と君の魂は今同じ体にいるからか、君の前では思念体で存在できるみたいだ」
「……ホログラムみたいな?」
「なんだそれは?」
「そうかおじいちゃんが知るわけがないか」
「君はシンプルに失礼なんだな」
このあとわかったんだがこの思念体は俺以外は見えないらしい
ただ…ただ
騒がしい
ホテルまで歩いているときこいつはずっと俺の横で騒ぎ続けていた
ホテルについた頃には俺はもう全てクタクタだった
「うぉぉぉぉぉ」
オリンピック3連覇並みのフォームでベットに飛び込む
本来なら4人で泊まるはずだった宿
今では鬼神と俺の二人だけだ
「少年、新聞が見たいんだが持ってきてくれないかな?」
「ウッセー、今はゆっくりさせてくれよ」
そういいベットの上にあったテレビのリモコンをつける
「ニュースならこっちで見てくれ俺は寝たい」
ベットに埋もれながら考える
この鬼神と名乗っている「宍戸龍一」の存在
400年間生きてきた魔導士
究極の知りたがり屋で同時に究極の魔術師、、、らしい
で家と喧嘩してるんだっけ
う〜むよくわからん
「なぁ鬼神」
「なんだ少年」
「なんであんたはそこまでは長生きしてんだなんか目的とかあったりすんの?」
「明確な目的や目標はない、ただこの世界で簡単に死ぬには勿体無いと思っただけだ」
まぁこんなの見せられたらすごいし興味は湧く
俺もちょっとは共感できるよ
その日は寝た
次の日俺は東京に帰った
帰りの最中、鬼神が飛行機に初めて乗ったと騒ぎまくっていてうるさかった
どうやら俺は静けさを代償に生き返ったみたいだ
「がく〜こっちだよ」
「ただいま父さん」
「人生初の一人旅行はどうだった?」
「まぁ楽しかったよ」
正直な話、総評ではマイナスだ
「お兄い、おみやげちょうだい」
「あ、インフル治ったのか日向子」
「なおった、ちょうぜつグレイトミラクルかいふく、ばんざい」
妹の日向子
毎年、北海道に行けるのを楽しみにしていたんたが運悪くインフルになり撃沈
いつも小学校では元気らしんだが
本人も泣きながら「わたしも!ほっかいどう!きたい!」と懇願していた
父さんは骨が折れたろ
「あっちはどうだった?」
「あんま、変わらずだったよ」
「高校のこと母さんは」
「頑張れって、言ってたよ」
「なら良かった」
父さんの恵助
普段は時計屋の店長をしている
母さんとは違って魔術は全く使えない
ただ母さんの死後、俺達を男で一つで育ててくれた
「てか姉さんは?いつ帰ってくるの?」
父さんは少し苦笑いをしだす
「あぁ芽衣はな、来月帰ってくるらしい」
姉さんは今エジプトでフリーランスの考古学者をやっているらしい
今年は日本に帰ってくるはずだったのだが
「え?1ヶ月間違えたの?マジかよくあんなので大学いけたな」
「まぁ、おっちょこちょいな子だったからね」
いや、おっちょこちょいじゃない
あの人は適当なだけだ
「おねえちゃんとはやく、あいたい」
「お兄ちゃんはちょっとな〜」
久々の家
あの一大事があったからとても安心する
俺はすぐさま自分の部屋に駆け込んだ
「いい家に良い家族、恵まれているんだな少年」
「あんたに会うまでは最高だったよ」
優しい家族におしゃべりな鬼神が追加された
ちょっと気が滅入りかけている
「まぁただ助けてくれたことは感謝してる、できるだけ恩返しさせてくれよ」
俺も色々なことを知りたいし、分かち合いたい
「これからよろしくな」
「あぁ、少年」
とにかく明日から高校生だ
俺も色々準備しなきゃな




