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輪廻  作者: 悠羽
7/8

第六話 まだ足りない

私は、

 もう十分に生きたと思っていた。



 苦しい人生もあった。

 救いのない人生もあった。


 そして、

 誰かのために生きた人生もあった。



 それなのに、

 終わらなかった。



 目を覚ますたび、

 新しい身体にいる。


 新しい親。

 新しい環境。


 そして、

 更新された記憶と、

 積み重なった記憧。



 私は、

 疑問に思い始めていた。



 何が足りないのだろう。



 知識はある。

 経験もある。


 失敗も、

 後悔も、

 痛いほど知っている。



 それでも、

 輪廻は止まらない。



 この人生では、

 私はごく普通の人間だった。


 目立たず、

 失敗も少なく、

 成功も大きくない。



 前世の記憶は、

 必要なときだけ使った。


 深入りしすぎず、

 賢くなりすぎず。



 それなのに、

 夜になると、

 胸の奥がざわついた。



 思い出すのは、

 死の瞬間ではない。


 むしろ、

 生きている途中の感覚。



 誰かの背中。

 手の温度。

 言えなかった言葉。



 記憧は、

 静かに増えていく。


 使い道のない重さとして。



 ある日、

 私はふと考えた。



 もしかすると、

 私はまだ

 「受け入れていない」のではないか。



 親を選べないこと。

 身体を選べないこと。


 不公平な始まりを、

 不公平なまま引き受けること。



 私は、

 理解はしていた。


 でも、

 納得はしていなかった。



 どこかで、

 まだ思っている。



 次は、

 もう少しマシな人生を。


 次こそは、

 報われる人生を。



 その期待が、

 輪廻を続けさせているのではないか。



 もしそうなら。



 私はまだ、

 学びきっていない。



 報われなくても。

 選べなくても。


 それでも生きるということを。



 夜、

 静かな部屋で、

 一人座る。



 私は、

 初めて思った。



 この力は、

 私を導くためのものではない。



 諦めるためでも、

 耐えるためでもない。



 ただ、

 「受け入れる」ための罰なのだ。



 忘れられないまま。

 比べてしまうまま。


 それでも、

 今を生きる。



 それができるまで、

 私は、

 終われない。



 そう考えると、

 不思議と、

 怖さは薄れた。



 終わらないことよりも、

 分からないまま

 生きることの方が、

 ずっと人間らしい。



 次の人生が、

 どんな始まりでも。


 私は、

 また、

 目を開けるだろう。



 まだ足りないまま。


最終話:輪廻

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