忽然の追憶の手紙
「んんー、、」
朝、目が覚めると眩しい陽光が俺の視界を突き刺してきた。
酷い頭痛を感じる。
なにかおぞましい物を見た気がするけれど、ひどい夢でも見たのかな。いまから仕事なのに、寝不足だよ。。
普段、悪夢など見ることのない俺は、最悪の目覚めにひどい疲れを感じる。
「ん、、?泣いてるじゃん。最悪の夢だな。」
目が覚めた瞬間、涙が頬を伝っていることに気づく。
最悪すぎる夢のせいか、俺はなぜか目覚めに安堵を覚えた。
すると、服の上にボロボロの時計があった。
灰のようなもので黒く燻んでいる時計は、よく見てみると、高級感があり、どこかの貴族が好んで使いそうな魅力的な見た目をしている。
「なんだこれ。。」
見たことも無い時計に疑心を抱きながら、ベッドから上体を起こす。
ん??
上体を起こすと、時計とは別にズボンの上に手紙が置いてあった。
見たことのない時計に、誰からかの手紙。不思議すぎる現象に理解が追いてこない。
だが、俺は、顔を顰めて、首を傾げながら、ズボンの上にある手紙の封を切って、中身を開いた。
〜繋へ
はじめまして、私はルーラっていいます。
実は初めましてじゃないんだけど、そんなこと言っても分からないよね。笑
私は夢の世界の人で、あなたの世界とは別の世界に住んでいるの。
いきなり手紙があって驚いたと思うけれど、あなたには大事なことを伝えないといけない。
だから、順を追って説明させて欲しい。
私と君は、昔夢の中で一度出逢ってるの。
私は君と一緒の時間を過ごして、家族でピクニックにいったり、幸せな時間を過ごした。
それにね、私、繋のことが好きなんです。
いきなり、みずしらずの女に告白されたら怖いと思うけど、繋も私のこと好きなんだよ?
いきなりこんなの言われても、意味不明かもしれないけれど、記憶が消えてるからだと思う。
でも私は夢の中で、現実のあなたと会って、あなたは夢の中の私に出会った。
だから、少しでも思い出せるように、昔の話をします。
これは、繋が小さい時。
私は繋と出逢って、何度か噴水の綺麗な公園で毎日お話してたの。
こっちの世界じゃ時間が違うから、大体12日ごとに一回のペースで会ってたけれど、繋にとっては毎日かな?
二人で公園にいってピクニックに行って、そのうち、私は繋のことを親に紹介したの!
私たち親子はエルフ族で、普通の人間よりも長生きだから、時間の流れはちょうど同じくらいだと思ってくれて良い。
お母さんは料理上手で、クッキーとかサンドウィッチとか、毎回来るたびに色んな料理を作ってくれてた。
それを私たち親子で公園で食べたりして、ほんとに幸せだったな。
だけど、ある日その夢を見なくなった。
私の親は"アイツ"に殺された。
夢の都合で名前を出したら気づかれるから、名前は出せない。
だけど、私の親は殺されて、村の人もみんな死んで、そして、私は夢の監獄ってところに入れられた。
ずっと平和だった調律の取れていたはずの世界が"アイツ"によって崩された。
それによって、調律の取れていたはずの夢の世界と現実の世界を繋ぐ絆が、完全に切られてしまって、夢は完全に夢と化して、本当の夢のように毎日変わる内容になってしまった。
だから、私と繋は会えなくなったの。
でも、その絆が切られる直前、私は繋にあるものを託した。それはこの世界の夢の調律とあなたの夢の調律が出会った時に、あなたの夢の調律をしばらくこの世界に合わせられるように魔法をかけた。
いつか、あなたがこの夢に来れた時に、また会いたくて。
それに、もう一つあなたに託したものがある。
それは、この世界の狂わされた調律に背く呪文のようなもの。
たぶん、この手紙を読んでいるってことは、こっちのものを何か手に入れたんだね。
それは、たぶん貴方を必ず救ってくれる。
もしかしたら、それはいつかあなたと一緒にこの世界を救ってくれるかもしれない。
私のかけた呪文は、あなたの世界とこちらの世界のものを持っていけるっていうもの。
でも、制限として、こっちのものは一個しか持って行けなくて、必ず寝る前に身に持って欲しい。じゃないと、こっちのものは消えてしまうから。。
それと同様に寝る前にあなたに触れているそっちの世界のものはこっちに何個でも持っていける。
この力が何かに役に立つかは分からないけれど、手助けになってくれることを願ってる。
いきなりこんな沢山のことを伝えて困ってしまうと思うけど、全部本当のことだから、信じて欲しい。
繋、、私すこしだけ、弱音を吐きたい。私はずっとこの監獄に閉じ込められてから、何も出来ないまま毎日過ごしてる。家族が死んだ悲しみも200年経った今も忘れられないでいる。
それと一緒で繋と過ごした時のこと、私は今もずっと覚えてる。忘れてしまってるかもしれないけれど、私はあなたのこと、愛してる。
この世界を救ってなんて、誰かわからない私から言われても困るかもだけど、でも私は繋にお願いしたい。
繋になら救えるって信じてるから。簡単なことじゃないかもしれないけれど、絶対に繋ならできる。
この薄暗い暗闇と孤独からこの世界を、私を救い出して欲しい。
もし繋がこの世界を救ってくれたなら、その後、あなたの世界で二人で一緒に過ごしたい。難しいことかもしれないけれど、でも、一度も繋のことを忘れた日はなかった。
だから、お願い、、私の世界と私の家族を殺した"アイツ"から、みんなを救い出して欲しい。
こんな大役、任されて迷惑なのは分かってる。だけど、、私は繋を信じてる。
いつかまたあなたの笑顔が見れることを。二人でまたあんな幸せな時間が送りたい。
繋。いま好きな人はいる?たぶん、記憶が消えてるから出来ててもおかしくないよね。。
もしいたら、悲しいけど、でも、この世界を救ってくれるのは繋しかいない。
信じてる。
もし世界が救えたら色んな場所に行こ!夢の世界とそっちの世界。行けるか分からないけれど、色んな場所を二人で見て周りたい、こっちには、そっちの世界にない綺麗な花や生き物がたくさんいるから!
いつか二人でまた、同じ時を、同じ場所で、
待ってるね。繋。
世界を救ってくれる私の世界一かっこいい人、星跨繋へ。
ルーラ・レガンより
俺は全て読み終わった時、なぜか涙が出ていた。
なんの記憶もないはずなのに、なぜか涙が零れ落ちていた。
それに、昔の夢の記憶は、ずっと心の奥底にあったから、たぶん、この手紙は嘘をついてない。
記憶はほとんど残っていないけれど、何故か遠い昔のようには感じない。
ずっと幼少期見ていた夢の事なんだってことは、言われなくてもわかった。
それに、そんな遠い昔のように感じない。むしろ最近見た夢なような気もする。
ただ、俺はその手紙をしばらく見つめ、涙が止まったあと、手紙を机の上に置いた。
たぶん、この手紙からすると、このボロボロの時計は治した方がいい。
この時計には大事な何かがある気がする。
時計をよく見ると、三つの時計範囲があった。二つは普通の時計の針と同じで、もう一つは、針がなくゲージのようになっていた。
いままで見たことのない時計の形に俺はこの世界の物じゃないのだろうと、改めて実感した。
この異界のものを、果たしてこちらの世界で治せるのか、だかやってみるしかない。
そう思うと、俺は仕事に行く前に時計屋に行くことにした。
朝の憂鬱な仕事に少し変化が訪れたことに、俺は何故か、今までなかったはずの生きる勇気、いや、生きるやる気が出た気がした。
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