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豪炎の悪夢





 彼女の笑顔はただ眩しかった。それは暗い現世を照らすような眩しすぎる笑顔だった。光り輝くその笑顔は薄暗い現世とは対象的であり、幼かった自分にはまるで現実の物じゃなく夢の国の王女のようであった。


 ただ、いつからか、その夢は見なくなった。

 夢の中で光り輝く彼女の残影がこの目の網膜に焼き付いたまま。

 それは一種の呪いのように俺を口渇させ、待ち望んで、何度も何度も俺はその夢が見れるように、早く寝るようにしていた。

 だけど、どれだけ寝てもその夢は見れなかった。

 そんな日々が続いてるうちに、夢の記憶は薄れ、いつの日かその夢は忘れ去られて、

 俺は気づいたら22になっていた。

 そして、そんなこんなするうちに俺は、生気もないただの社会人になっていた。

 ただ、なにか大事なことを忘れていった喪失感は、日々次第に大きくなったまま。





 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 ある日、夢を見た。ものすごい悪夢だ。人は無惨に死にまくり、死体の山がそこかしこに転がっている。血で汚れた地面は血なまぐさく、嗚咽が止まらなかった。こんな恐怖を味わったことが無い俺は気がついた時には必死でその光景を見ないように目を瞑った。いや足が震えて止まらなかった。怖い、。そんな感情が俺の中を支配した。動けない。。動きたいのに、。

 俺は目の前の地獄の光景に、ただなす術もなく、足を振るわせることしかできずにたちすくんだ。


ドクンッ


 ふと、心臓が音を立てた。

 さっきまで恐怖で支配されていた感情がふと何かに押されるように意識が変わる。

 恐怖で動けなかった身体が動けるようになる。そして、この腐りきった残酷な今を変えたいと、俺らしくもないのに鼓動を上げ始めたのだ。いや、違う。彼女の声が心の中で強く自分を光の未来に連れていこうと引っ張っているのだ。


 この腐り切った世界を俺が変えてやる。


 ふと今まであった意識に光がさしたように、気づいたら感情は恐怖から、憎しみと勇気に変わっていた。

 俺は何故か、悔しいそう思っていて、目には涙が浮かんでいた。それは強い怒りに近い感情だ。

 そしてそれは誰か分からないけれど、おぞましい何かを強く憎むそんな感情だった。


 そのとき、目の前の死体の山を超えたその先に、秒針を無様にも力強く、ガタをあげながら必死に動かしている時計が光り輝いてるのが目に入る。

 周りの家が取り囲んだ大きな施設は半壊しており、そんな中に地面に転げ落ちている時計が、この世界を異質にも優しく包み込もうと必死で頑張っているように見えた。

 俺は、そんな壊れそうな時計が目に入った時、何故か、この時計を取るしかない。そんな運命的な何かを感じる。

 仮にもし、それが意味の無い壊れかけのただの時計だとしても、俺はそれを手に入れるしかない。この夢が覚める前に。

 そう思うと、俺はあの時計を手に入れなければいけない使命が心に刻まれる。

 あの時計が手に入れられなければ、おそらくこの夢からは覚めて、二度とこの夢にはこれない気がする。

 こんな悪夢来たくないはずなのに、俺はこの夢に抗おうとしていた。

 そして何故か悔しくて悔しくて仕方がなかった。

 こんなにも何かを憎んだのも、何かに抗おうとしたのもこれが初めてかもしれない。

 だけど、誰もこんな今も、こんな未来も望んでいないはずだ。だから、俺がこんな時間を変えてやる。

 そう心に決心すると、気づいた時には足が動き出していた。

 恐怖で血塗れていた感情が、光の未来へと突き進もうと足を突き上げる。

 俺は死体の山を避け必死でもつれた足を、無様にも足掻き、突き進んだ。ひたすらに血に濡れた真っ赤な地面を。


イタッ、、


 突然足に激痛が感じる。

 足を見てみると、足にはガラスが何箇所にも刺さり、血が出ていた。

 周りの家は、ガラスが割れており、家は燃え、悲惨な光景が広がっている。

 必死で逃げようとしてドアに手をかけたまま、背中を切り裂かれた人や、子供を庇おうとして、頭を潰されたまま子供ごと引き裂かれた死体。見るに耐えない惨状がそこらかしこに広がっている。誰の声も聞こえない残酷な今が豪炎の中、その炎の音だけを残酷に、耳を逆撫でてくる。

 俺はそんな無惨な光景の中、血まみれの足を見て、ふと身体を見てみると、ボロボロの服に靴もなく見窄らしい姿をしていた。

 あまりにも見窄らしいその格好は貧民街にいるホームレスのような見た目だった。

 そもそも、なぜ、こんな服を着ているのかも分からないし、この悪夢はそもそも何なのかも分からない。

 だけど、そんな事気にしている時間が俺には無い。いまあの時計を掴み取らないと、俺の全てがまたあの薄暗い現世に追い返す気がした。

 こんな今を望むわけではない。けれど、こんな酷い光景を何もせず見過ごすわけにもいかなかった。

 だから、俺は血まみれの足で痛くて涙が目に浮かびながらも、あの時計に足を突き動かす。

 グチュグチュになった血まみれの足は痛くて仕方ないはずなのに、俺はこの光景を見ることのほうがもっと辛かった。

 俺は痛みで気が狂いそうな中、涙を浮かべながら大声で叫ぶ。


「あ゛あ゛あ゛あああああ゛あーーーーー!!!」



 血まみれで痛い。走れば走るほど落ちているガラスが、新しい傷跡を作り、さらに傷口を広げる。

 痛くて仕方ないけれど、あの時計を手に入れないと一生後悔する気がする。そんな後悔は絶対にしたくない。

 自分を駆り立てる気持ちが必死であの時計へと向かおうと突き立ててくる。

 そんな気持ちに苛まれながら時計に目を向けていると、時計が止まろうとしている。

 やばい、、時計が今にも止まりそうだ。もう数秒もない。これを逃したら絶対に次は無い。この今も、この先の未来も。


「間に合ええええーーーーーー!!!!!」



 ボロボロの時計は最後の秒針をキリキリと音を上げながら、最後の1秒を刻もうとする。もう1秒もない。

 迫り来る時間と焦る気持ちを無視して、俺は思いっきり転げることなど気にせず、飛び込んだ。


.......カチッ









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