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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 本栖湖派出所攻防戦
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95 纐纈城主とメルト

I Don't Remembar.

纐纈城主のお話しですね。


ずるずると引きずられている。

固い肌触りだ。

両脇から片腕ずつ持たれて、ずるずると引きずられていく。

豪雨の中、傘もささずに外をほっつき歩いたかのようにずぶ濡れだ。

どうやら気を失っていたらしい。気を失う前はどんな状態だったのだろう? 溺れかけたんだろうか。勢いよく噴出した水に翻弄されたような気がする。でもなぜそんな状況になったのかは思い出せなかった。

一時的な記憶喪失かなあ。よっぽど怖かったのかなあ。強烈なショックに襲われたのかなあ? 心を守るために記憶を封印するということもあるそうだし。

はて自分は怖くて記憶を閉じ込めちゃうような出来事ってあったのか? あれあれ? 自分が果たして一体誰なのか? 自分は誰なんだろう?

「城主である」

真っ先に思い浮かぶのがこの言葉だ。それはこの真っ赤っかな石畳や石壁が連なる建物の主ということなのかな? 城主であることはわかった。だけど自分がどうやって城主となったのか、そういう経緯はさっぱりわからない。そういう記憶が何にもない。自分が城主である前、いったい何者であったのかまったくもって記憶がない。


気が付くと大広間に座らされていた。目の前には白塗りの男がにやにやと立っている。

「隔たりの中に放されていたからな。私の間隔は今鋭敏なのだよ」

白塗りの男は自分に語りかける。

「自分が此処に在ると確信できる。そんなハラハラドキドキが結構な大好物でね」

白塗りの男はくるくると回りながら独白を続ける。

俺はこの男と知り合いなのだろうか? 俺は自分を証明する手段がない。城主であることしかわからない。

「お前は俺が何者か知っている体で話をしているな」

俺は白塗りの男に尋ねた。

「ふふん。息を凝らしてため込んだまま、寝ることも叶わず目覚めてしまっている。そんなお前のことを知っているよ」

「お前の言葉は難解だな。俺にはお前の言葉を解き明かす道具もない。俺は今自分がなぜ此処に居るのかもわからないでいる。もっとはっきりとわかりやすく言えよ」

「そうさなあ。お前が城主に至るまでの記憶を持っていないのも、もちろん俺は知っているよ。だからお前の中の恐怖は朧な陰でしかないのさ。自分が何をしでかして城主になったのか、お前は知らんのだからな」

頭が混乱している俺は、何も言えなかった。

憶えていないんだよ。

憶えていない、憶えていないし、

思い出せないんだよ。

「ぎゃははは。侵入者に対してその言い草。城主とは辛いものだな」

白塗りの男は大笑いしながら、クルクルと廻った。

ああほんとに憶えていない。

だからついつい問うてしまうのさ。

「我は誰ぞ?」

ピーター・ガブリエル 記憶喪失

https://www.youtube.com/watch?v=9k_ZRyws8Uc

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