93 シバテツのホーセズ・ネック
さてさてホーセズ・ネックなるカクテルとは如何なるものか?
ホーセズ・ネック。
IBA公式カクテルに名を連ねる有名なカクテルだ。IBAというのは国際バーテンダー協会といって、
1951 年 2 月 24 日土曜日、英国トーキーのグランド ホテルのサロンで設立された。バーテンダーの利益と発展のため、高い水準の能力と行動を奨励することを目的としている。その国際バーテンダー協会が発表した代表的なカクテルの一つである。
ホーセズ・ネック=馬の首である。1900年代に誕生したこの飲み物は、最初はジンジャーエールと氷とレモン果汁を絞っただけのノンアルコールカクテルだった。その後ブランデーなどを加えた現在の形に変わっていったという。レモンの皮を螺旋状に切って、その先端をグラスから垂らす仕様(これが馬の首にみえることから命名された)は変わっていない。
シバテツはハイボールグラスに氷を注ぎ、カクテルスプーンでくるくると氷を回していく。コップの側面に触れていた氷が回転するたびに少しずつ溶けていく。溶けてそこに溜まった水をシンクにこぼすと、ブランデーを注ぎ、ジンジャーエールをゆっくりと注いで混ぜ合わせる。シバテツは冷蔵庫からレモンを取り出すと大きく息を吐いた。そしてナイフをレモンにあてがうとらせん状に皮をむいていく。その仕草はとても綺麗とは言い難かった。シバテツは基本器用ではない。最初はらせん状に剝くことすらできなかったのだ。螺旋に剥いたレモンの皮が剥き終わろうとしたときに、ぽとりと途中から切れてテーブルに落ちてしまった。
ハナはゴッドファーザーのテーマを鼻歌で歌いながら、シバテツを見やる。顔には満面の笑みを湛えている。
「約束通り、シバテツのおごりね」
シバテツは溜息をつきながら大きくうなづいた。シバテツがうまくレモンの皮を剝けたならば、ハナがドリンク代を支払う。ちゃんと剥けなかったらシバテツのおごりとなる。
シバテツとハナはそんな約束をしていた。
「お、おう……」
光り輝く人を前にすると臆してしまう。言葉がもつれてうまく喋れなくなる。頭の中はなんだろうか考えがぐるぐると廻っているのは感じる。それが言葉として紡ぐことができない。なぜなんだろう?
「むっひっひー」
ご満悦のハナは、シバテツの想いなど気づかぬようにごくりとホーセズ・ネックを呑んだ。こめかみの鈍痛の痛さが一段階上がったが、ハナは気にしないことにした。原因不明の頭痛とは長い付き合いだ。原因不明? ほんとに?
シバテツのお話も元々別で考えていたお話。煮詰まった自分は、無理矢理この坩堝に放り込んでしまいました。如何なるケミストリーが生まれるでしょうか?
あとね、知らないうちに月がよく似た木造建造物に置き換わってしまう話とか、井上円了率いる秘密結社「外道哲学」が哲学堂要塞で攻めてくる話とか、いろいろやりたいです。和三郎とヒルヒルに迎え撃ってもらいたい!




