82 佛淵兵庫 チャンチャマイヨと出会う
さてさてお城では大騒ぎが続いていますが、樹海の方でも大騒ぎの予感!
2024/08/20 城主の事情を追加。いや、知らんがな。
「蚤とりましょう、猫の蚤とり!」
朗々とした男の声がどんどん自分に近づいてくる。チャンチャマイヨはパニックに陥った。
佛淵兵庫が通路の角を曲がったところ、目の前にしゃがみこんでガタガタ震える異国の少女を発見した。
「ふむ。そこの娘。何を怖がっている? 何か怖いものでも居ったのか?」
震えながらチャンチャマイヨは佛淵兵庫を見上げた。黒い着流しの得体の知れない男に、訳の分からない言葉で声をかけられた。チャンチャマイヨはすっかり怖気を振るってしまった。
「ノォミトリィ!」
「のーみとりぃ? あああ、これは申し訳ないことをしたな」
佛淵兵庫は辛気臭くて行けないと景気づけにいつもの猫の蚤取りの口上を叫んでいたのだが、どうもそれが彼女を怯えさせたらしい。兵庫はしゃがみこむと少女と同じ高さに視線を持っていった。
「娘よ、すまぬことをした。変な掛け声は怖かったか。私はお前さまを傷つけるようなことはせぬよ」
と優しく語りかけた。
「ノォミトリィ?」
チャンチャマイヨは佛淵兵庫をみつめる。
「いや、わしは佛淵兵庫という浪人だな。猫の蚤取りは生業であるよ」
チャンチャマイヨは兵庫の名前をノォミトリィと勘違いしてしまったようだ。
「我は誰ぞ」
纐纈布を纏いし仮面の男は誰に問うでもなく、同じ言葉を繰り返した。男には己の過去の記憶が全くなかった。自分がこの城の主であることは認識している。というか刷り込まれているようだ。だが、自分が纐纈城の城主となる前の記憶がとんと曖昧なのだ。故に
「我は誰ぞ」
なのである。
依子ちゃんはそんな城主の事情は知らないから
「知るか、ボケ」
なのである。
仮面の城主は纐纈布をヒュドラの如く数条はためかせたまま制止する。依子は胴田貫を腰だめにして構える。
「カマドウマは嫌だ。カマドウマは嫌だ。カマドウマは嫌だ。できれば白い可愛いシナモンロールがいいなあ。次は何卒シナモンロールでお願いします」
白糸台は両手を握り合わせて額に当てながら強く強く念じていた。
「何をそんなにぶつぶつ言っているんだ、白糸台」
「先ほど、俺はやらかしてしまったからな、中島敦」
「ああ、カの付くやつが大量に現れた件だな」
「ああ、俺が不用意に奴らの名前を出したからな、あの気色悪い奴がワラワラ湧いてしまった。あまつさえ、巨大化まで許してしまった。だから、今度は人畜無害なものをお願いしていたんだよ。中島敦」
「いやいやいや、それ思いっきりフラグになっていないか?」
「え?」
白糸台がきょとんとしている数秒後、地鳴りが響き始めた。
「第2次攻撃の始まりじゃな、警官殿」
鳰鳥がキャップを直しながら、二人に声をかける。振り向いた二人の前に水色のジャージタイプの上着を羽織り、可愛いおへそを覗かせる鳰鳥と、鳥黐竿をビュンビュン撓らせる甚五の雄姿があった。その横から第1次攻撃をしのいだロック達土偶兵士、タケミナカタ達諏訪軍団、水門ニックの恵と瀬蓮がずいっと並んだ。
「まるで石ノ森章太郎の『幻魔大戦』ラストカットだな! 白糸台」
「やめろ、中島敦。あれは幻魔に敗れるダメだった世界線じゃなかったか?」
「そうだっけ?」
ヒルヒルの衛星巨砲によって穿たれた孔からもぞもぞと白い物体が現れ始めた。
「また奴らの相手をするのかい……ん? あれはなんだあ?」
甚五が大声を上げる。樹海のコンクリート塀に穿たれた孔からは、当然白いヒョロヒョロが現れるのだろうとみんなは思っていたのだ。だが現れたのは……。
「白糸台ー!」
孔から顔を出したのはなんとも可愛らしいルックスだが、なにかが微妙に違うシナモンロールもどきだったのだ。しかも4メートルほどの大きさだ。
「スコープドッグサイズかあ」
「あ、あ、あれは、お、お、俺が望んだシナモンロールではないっ!」
「そうだな。白糸台。あれはなんか違う。もどきだ。パチモンだよ。中国製の版権取ってない感じのやつだ!」
中島敦が虎の様に吼えた。
白糸台の強い想いが呼応してます。なんでこんなことになってるの?
面白い事重視で進めてしまっているぞ。
理由は後で考えよう。




