75 遠目塚依子とクロンボのカツカレー
遠目塚依子ちゃんと如月冴ちゃんの登場です。
はりきってどうぞ!
2024/07/24 ピンクじゃなくってブラウンだった。ピンクはブシュミー。
「カレーを食べたり、ミートソースを食べたりするときに決まって白い服を着ている。そんでもってピピッって、飛沫を飛ばしてしまう。これは巡り合わせなのだと思う。
しかも同じ服。たまたまローテーションで、この白いワンピースを着るわけ。別にこないだカレー食べて汚したから注意しなくちゃとかは、着た時には思わなくてね。汚しちゃった後で、ああ、この間もこの白いワンピースだったと気付く。外食してカレーを食べよう、ミートソースを食べようと決断した時だって、汚した時と同じ服を着ているとは気づかない。汚した途端、全てに合点がいくという。なぜ気づかないのかなあっと後からじわじわ悔しくなる」
「ジェイソンが出るって言われてる場所に居るのに、堪らずイチャイチャしだす脳筋カップルみたいなもんだな。大体お約束で殺されちゃうんだよ」
「例えがちょっと違うようだけど、カレーライスを食べたいという欲求に抗えない。白い服を着ていて汚す可能性があるんだから我慢しようという気持ちに蓋をする。それがイチャイチャ脳筋カップルの思考と同じだってこと?」
「そうなるかな」
「いやいや、向こうは明らかに不穏な雰囲気があって、そういう曰くつきな場所でイチャコラすること。それがタブーを破るみたいな変な気持ちになっちゃって燃え上ってるわけでしょ。私は汚すまでの瞬間、カレーライスがシャツを汚すことの危険性は感じてないし、汚しちゃうかもしれないというスリルで興奮もしていないよ。食べてうまいなあもぐもぐ……あらあらまあまあ、汚れているわという感じなんだよ」
「そうか。例えが少し違ったねえ、ごめんね」
高円寺の洋食の店 クロンボのカウンター席でカツカレーを食べるのが遠目塚依子。その横で『13日の金曜日PART2』のベッドで串刺しバカップルの話をしながら、クロンボ定食を食べているのが如月冴だった。
「なんだろう、このくだらない話を延々してるのって、マドンナの歌を熱く語るおっさんみたいだねえ」
「ブラウンって名前だったよ。ペインペインってうるさかったよね」
カウンターに置いていたスマホがぶるぶるぶると振動する。何気なく手にした如月が発信先を確認して、にんまりと不敵な笑顔を浮かべた。
「姉さんからだよ、緊急呼び出しだよ、きっと」
発信先の名前は公安8課の実質差配担当、佐々門姉さんだった。
「まあ、黄色く汚れている」
依子が白いワンピースの胸元をつまんで、悲しそうな顔をした。
高架下の天井付近は照明が当たらず黒く沈んだ色をしている。その暗闇に溶け込んだのか、正松本の首を切り裂いた加害者の姿は確認できない。無窮丸は一瞬犯人の姿を捉えたのだが、我が目を疑った。どうにも加害者の顔は人のカタチをしていなかったのだ。
そう。どこかの世界から弾かれて我らの世界に現れたのは、猛禽の顔をしていた。いわゆる我らの世界ではモンスターに分類される代物だった。彼らの世界ではその世界の覇権を握る絶対的強者なのだろう。
「どの時点で分岐したら、アレになるんだろうな?」
宵闇は障害物に身を隠し、グロックを構えながら加害者が消えていった天井の暗闇を凝視する。
「そうね。どう贔屓目に見ても、人間のカタチはしていなかったわね」
二人の背後で応援の警官が、必死に一般人の避難誘導を行っていた。
「船越と首藤が見当たらないな」
アーケードの中央辺り、少しだけ広場っぽくなっている空間の真ん中に、正松本の首なし死体が転がっている。先に駆けつけたはずだが。正松本の死体の傍に脚が落ちている。2本。そこから流れ出した血の跡が広場と逆の方に続いていた。宵闇が血の跡を追って視線を移していくと、応援の警官に助けられた船越を確認した。両脚が無い。きつく止血はされているが、血飛沫は止まらない。
「ここはいいから、お前ら船越を運び出せっ」
宵闇が叫ぶとその声に呼応したのか、天井の漆黒からこぼれ出るように、彼の国の住人が姿を現した。両腕から巨大な鉈状の刃物が伸びている。黒い隆々たる筋肉をまとった偉丈夫が、正松本の屍の上に軽やかに降り立ったのだ。
船越の救出を行う警官達の中に、返り血を浴びた首藤の姿があった。船越を抱えるとそのまま通路の壁際まで運んでいこうとしていた。黒い偉丈夫は船越を抱える警官達に視線を投げた。
「まずいわね」
そう言うと無窮丸は無造作にグロックのトリガーを引いた。
確実に着弾しているはずなのだが、黒い偉丈夫は意に介さず、警官達の方へ歩を進める。
「ほんとに同じ世界から枝分かれしたのかよっと」
宵闇が無窮丸に加勢する。焼け石に水。首藤は船越を警官達に預け、彼らを守るように前へと踏み出した。ホルスターからグロックを抜き構えてトリガーを引いたはずなのだが発射音がしない。手元を見た首藤は自分の利き腕の手首から先が無くなっていることを確認した。視認したことで首藤を激痛が襲う。右手を押さえてうずくまってしまった。黒い偉丈夫は振り返り宵闇と無窮丸を視界に捉えた。捉えたまま左腕をゆっくりと振り上げた。
「首藤おおおっ!」
宵闇が叫ぶ。黒い偉丈夫が笑った。我ら人類とは似ても似つかぬ猛禽の顔をしているので、表情は読み取りにくいはずなのだが、宵闇と無窮丸は黒い偉丈夫が『笑っている』と認識した。
黒い偉丈夫が左腕を振り下ろす。首藤の右肩に偉丈夫の左腕の鉈が食い込んでいく。皮膚を切り裂き、肉を両断し、鎖骨に肋骨を砕いていく。首藤は右肩から入った刃が身体の中心へ食い込んでいき、二つに割けてしまった。臓腑が零れ落ちどしゃどしゃと音を立てる。バシャバシャと血糊が溢れる。
「うっおー。こりゃまた『鮮血のイリュージョン』だねえ、ヨリー」
その場にそぐわぬ如月冴の黄色い声に、宵闇が顔をしかめる。無窮丸は呆気にとられる。
「ヨリーはやめて。寄居と間違われたらたまったもんじゃないわ」
「えー『ダーティハリー』の採石場みたいでカッコいいじゃん、寄居」
「まあ、そういう見方もあるのね。私は東映特撮御用達爆発道場だと思っていたわ」
「いまはどっちかって言うとデジタルで処理しちゃうんでしょ」
「詳しくは知らなっ……」
ゼロ距離移動で振り下ろされた偉丈夫の鉈を依子が刀の鞘で受け流した。
「なになに? 危ないなあ」
受け流すと同時に距離を取った依子が、グロックを構える宵闇と無窮丸に気づき、小さく手を振る。
「佐々門姉さんに言われてやって来たよ! アレソレっぽいので8課も加勢します」
如月冴が宣言する。宵闇が苦悶の表情を浮かべる。
「があああったく、なんでよりによって、あの二人なんだよっ」
無窮丸が同情するように宵闇を見やる。
「貴ちゃん、ちょっと待っててね。今なんとかするから」
そう言うと遠目塚依子は日本刀を鞘ごと構える。ふと自分の白いワンピースの裾を見た。
「まあ、真っ紅に濡れている!」
新キャラが増えていくし、本筋の纐纈城はどうなったんでしょう?
纐纈城だすとこまでしか考えていなかったので、
視点切り替えていろいろ補足をしようと思っていたのですが、
なんか思っていることとやっていることが随分とかけ離れてきてるなあ。
『キラーカブトガニ』を見ました。いろいろてんこ盛りで楽しかったです。
ほんとにヤンキーはサメが大好きなんだなあと思いました。




