74 宵闇と無窮丸 8課とのすみ分けに戸惑う
公安7課その3かな?
こっちは少しシリアスな感じだなあ。
公安7課。
対異界訪問者対策班と呼ばれている。
異界からの招かれざる客を発見、拘束し、可能な限り我らの世界から無くすことに尽力している。
異界、異世界などと呼ばれているが、実際のところは並行宇宙の別の世界というのが有力な説である。
現在の我らの世界の我らの地球とは違う分岐を経て、全く違う様相を呈した彼方の世界の彼方の地球であったり、彼方の地球が存在する彼方の世界の別の惑星から弾かれて、我らの世界を訪れるモノも多い。またその逆に彼方の世界にたどり着いてしまう我らの世界の住人も存在する。
世界から弾き出される際、かなり大きなエネルギーが消費される。その発生地点で招かれざる客を発見するのが公安7課の仕事である。
公安8課が担当する、オカルティックな怪奇事件とのリンクは少なからず存在する。公安8課がずっと追いかけている御仏アブダクションは、西方浄土が支配する異界に繋がっていることが確認されている。新しく赴任した鈴鹿和三郎が内緒で使役するクマのぬいぐるみにしか見えない生物は、クマのぬいぐるみが住む世界、通称ヌイグルミ惑星から弾かれた存在だと認識はしている。和三郎は気づいていないが、7課では監視対象となっている。
「住み分けが難しいんだよな。7課扱いか8課扱いか、判断に迷うよな」
「まあ、そうね。やっぱりアレソレだったから、8課に引き継いでって事は多いわよね」
無窮丸はアールグレイを口に運ぶ。
「迷い人の捜査って話だったのに、人のカタチしていないのはどうかと思うわよ」
「阿佐ヶ谷の高架下の件だ」
「ああいう情報不足で犠牲が出るのは勘弁したいわ」
「あれはヤバかった」
「船越は両脚切断でリタイアよ。正松本と首藤は首切られて絶命。あれをグロッグ一丁で確保しろって、どこの無理ゲーよ」
「まあ、正松本はしょうがないけど、首藤は残念だった。使えそうなルーキーだったのにな」
「確かに。少しは楽できるかと思ったけどね。なんとか8課が間に合ったんで、私は死なずに此処に居るというわけ」
「あの二人は……苦手だ」
宵闇が吐き捨てるように言う。
「特にヨリーでしょ?」
無窮丸が宵闇の反応を見て、面白そうに言葉を継いだ。
和三郎が公安8課に赴任する少し前のこと。
エネルギー収束点を確認して7課のメンツが阿佐ヶ谷駅高架下へと急ぐ。1967年にオープンした阿佐ヶ谷ゴールド商店街という商店街がかつて存在した。しかし、家主であるJRの無策による店舗減少、詐欺まがいの契約更新など、主に家主側の勝手な都合で閉鎖した。家主は満を持してゴールド商店街を豆の名前を冠したおしゃれな商業施設へと再構築した。その街、あの街の独自性を端から無視して、大規模チェーン店が軒を並べる無個性な商店街が姿を現した。。
「ポキン
金太郎」
無窮丸がつぶやく。隣で宵闇がなんだそりゃと訝しそうな顔をする。
「いやね、金太郎飴みたいにどこを折っても同じ絵柄が出てくる。そんな商店街だよねってこと」
「真新しいな。これ、年寄りが考える若者が好きそうな店の典型だな。ターゲットからするとじゃない感満載なんだろうな」
「ちなみに『ポキン金太郎』は『ねじ式』から引用」
「ふーん、カフカの小説だろ? 主人公が毒虫になっても誰も驚かないやつ」
「漫画。つげ義春。メメクラゲに刺された主人公の左腕になぜかバルブが生える話」
正松本と首藤が駅の方から小走りにやってきた。
「ここですか」
正松本が高円寺方面へ伸びる商店街の通路を見やった。
「船越が先行してる」
この商店街の真ん中に現れて、そこから動いていないらしい。
「じゃ、我々は後を追います」
正松本と首藤が高円寺方面へ走っていく。派出所から応援に来た警官達と合流して、少し遅れて宵闇と無窮丸が歩き出した。
その足許にコロコロと転がって来る、サッカーボールくらいの大きさのものがある。ゆっくりと止まったそれは生首だった。鋭利な刃物で首を断ち切られたのか、綺麗な切断面をしていた。その切断面から血糊の軌跡を伸ばしながら、生首は宵闇の足許で止まったのだ。
ほんの少し前に別れた正松本の生首だった。自分の首が斬られたことを認識していない間抜けな表情を浮かべて、さらに口がだらんと開いたまま。あらぬ方向を見つめたまま固まっている。
宵闇も無窮丸も、その場にいた警官もそれが生首しかも同僚のものであると認識するのに時間がかかった。
たんたんたん。
乾いた発砲音が響く。首藤か船越が発砲した音だろう。
「ううううううっ」
宵闇が声にならないうなり声を上げる。
無窮丸がインカムで報告しようとしたが、咄嗟に声が出てこず、あうあうと初めて水に触れたヘレン・ケラーの如く呆然としている。
今月の主題歌追加『キグルミ惑星』原曲の方。
たたき台として考えたプロット導入部を利用して7課のお話を展開中。
「北欧系美少女が制服で戦うって燃えるよね」という知り合いの映像作家のオファーで書きかけたんだが、なんか興が乗らずペンディングしてたやつがありました。
金髪おねえちゃんがコスプレで戦うってのはサッカーパンチでやっちゃってたし、下手すりゃプリキュアで手垢が着きまくってるのになあなんて考えだしたら、途端にトーンダウンした私の筆は止まってしまったのでした。
アプローチ次第ではありかなあと考え直して、さてどうやって8課はお助けに来るのか、うーんうんと考え中。




