71 シュタ公のはらたま!
巨大カマドウマっ!
昆虫食では素揚げして食べるとか。エビみたいで旨いとか。
私はイナゴの佃煮がいいです。あれはご飯が進む。
2024/07/10 タメが欲しいので試行錯誤。
「ああああっ、あれあれっ、いやなんだよー、あの跳び方! なんであの醜い体躯で軽やかに飛び跳ねるんだよー」
和三郎が何気に取り乱している。子供の頃の記憶が蘇る。家では冬になると石油ファンヒーターなんてのを使っていて、和三郎は石油が無くなったらタンクに補充する係だった。ちょっと広めの玄関に石油の入ったポリタンクが置いてあり、そこまで燃料タンクを持って行って、石油燃焼機器用注油ポンプでもってシュコーシュコーと注油するんである。このポンプはアスクルとかモノタロウあたりだと、醤油チュルチュルの名前で販売していたりするけど、実際のところどうなんだろう?
「醤油チュルチュルはドクター中松が発明した商品の名前だよ。醤油を一升瓶から小瓶に移すために発明した商品だから、まあ別物なんだろうね。その醤油チュルチュルを石油の注油用に特化したのが、石油燃焼機器用注油ポンプらしいよ」
ああーっ田部サンたら、また人の回想シーンに。割り込んじゃダメだって。まあ、石油の補充自体は苦でもなんでもなかったんだけど、そこに時々やつがいたんだよね。後ろ脚が妙にぶっとい、猫背のあいつ。ひょろっと長くって、変な体勢で鎮座ましましている。どこから入ってきたのかさっぱりわかんないけど、なぜかそこに居る。居るだけならいいんだけど、ちょっとした刺激で突然ぴょんぴょんと跳ねまくる。怖がりだった和三郎少年は、もうもうその存在にビビりまくったという次第。
その超巨大版が、子供の頃に涙目になるほどビビらせてくれた、あの跳び方で徐々にこっちに迫ってくる。こりゃあ、悲鳴も上げるでしょ。
「ヒルヒルーっ、さっきのドカーンってので早く!早くう!」
ヒルヒルは砲台固定用の義肢でV8ポーズを作る。
「エネルギー切れーっ! 充填するには衛星と位置が離れすぎちゃって、今は無理ーっ」
「ダメならバッテンポーズにしろよー。V8ポーズだから行けるんかと思ったぞー」
そんな和三郎の肩の上、シュタ公が何やら騒いでいる。和三郎の顔をたしたし叩いていた。
「なんだよー、シュタ公。お前は怖くないのかよー」
「いあっ!」
何かを言いたげにしているのだが、和三郎はそれどころではない。
「いあっ! いあっ!」
シュタ公はさらに重ねて、和三郎に呼び掛けている。
「なんだよ、奴が飛び跳ねててむちゃきもいんだぞ」
「いあいあっ! いあいあっ!」
シュタ公が大麻を振る神主のような動きをしてみせた。
「はらたま! きよたま!ってサクラ先生かよ……うん?」
「いあっ!」
シュタ公は自分を指差し、その後で大麻を振る真似をした。
「とんでもねえ、あたしゃ神様…だよ?」
「いあああう!」
シュタ公は再び同じ動作を繰り返す。
「俺ごと狩れ? 橋本と小川の合体ワザだな、よく知ってるな」
「いあああああああう!」
シュタ公は再び同じ動作を繰り返す。
「お前を祓うの…か?」
シュタ公が腰に手を当てて大きく頷いた。
「お前を祓うといいことがあるの?」
「いああっ!」
シュタ公が自信たっぷりに腕を組んで、大きく頷く。
二人のやり取りに気づいた鳰鳥姉さんがスタスタと寄ってきた。
「おっ、噂の祓の詔じゃな。おーい、タケミナカタ! 度津の倅が祓うそうじゃぞ」
呼ばれたタケミナカタもスタスタと寄ってきた。
「そうか、和三盆。お手並み拝見、だな」
皆の視線が自分に集まる。後ろでは迫りくる超巨大カマドウマwith超巨大ハリガネムシの跳躍音が聞こえていた。和三郎はだんだん、迫りくるアレの恐怖を払えるなら、シュタ公を祓ってやると、そんな気持ちになっていた。
「それじゃあ祓うよ」
「いあっ!」
和三郎はシュタ公を見つめ呟き始めた。
ああやっぱり頭の中にはっきりと祓の詔が思い浮かぶ。なんでだろう? なんでかな? その理由を調べるには、やっぱり佐渡島まで行くしかないんだろうか? 確か偏屈な叔父がまだ住んでいたと思うんだけど、その辺も今度大きい姉ちゃんに聞いておこう。
「掛けまくも畏き
伊邪那岐大神、
筑紫の日向の橘の
小戸の阿波岐原に、
御禊祓へ給ひし時に
生り坐せる
祓戸の大神等、
諸の禍事・罪・穢
有らむをば、
祓へ給ひ
清め給へと白す事を
聞食せと、
恐み恐み白す」
「頼んだぞシュタ公!」
「いあっ!」
「なんか、カプセル怪獣みたいだなあ」
「あっ……」
「感じた? パーシヴァルったら、役に立ってるみたいね」
くまくまランドに招聘された鈴鹿連は、力の脈動を感じ取っていた。
「うん、でもね、パーシヴァルって名前じゃなかったよ」
「え、違う名前なの?」
頼子ちゃんがにっこりと尋ねた。
「怒らないでね、あの子、ネーミングセンスが死んじゃってるから、強烈な名前に変わってたよ」
「え?」
「シュタ公」
「あん?」
「だから怒らないで。シュタイフみたいなタグが付いてるから……」
「で、パーシヴァルがシュタ公……」
頼子ちゃん、無言で拳を強く握りしめていた。
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
シュタ公の身体がどんどん大きくなっていく。すでにアンドレザ・ジャイアントパンダの大きさにまでなっている。大きくなるのは止まらない。ガンダムくらいの大きさになったシュタ公が、ひょいっと和三郎を持ち上げると肩に乗せた。
「あははっ! 今は俺が大作少年だなっ」
シュタ公の肩に乗った和三郎がテンション高く叫んだ。
「ま゛っ」
シュタ公が大きな声で答えた。
どこかで祓わせなくちゃと思っていたんだけど、うーん。
ほんとはヒルヒル絡みが良いんだろうけどなああ。




