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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 本栖湖派出所攻防戦
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69 ヒルヒルと白いヒョロヒョロジャイアント

まだまだ続くよ派出所攻防戦5!


2024/07/05 後半を大幅加筆+さらに加筆

白糸台と中島敦は衛星巨砲を逃れた、白いヒョロヒョロの討伐を続けていた。

「夏の終わりの蝉を思い出すなあ」

「死んでいると思って不用意に近づいたら、突然ジジジジジジジジとのたうち回る。あれか?」

たたんと中島敦がヒョロヒョロ頭部を撃ち抜きながら答える。

「それだよそれ。あれ吃驚するよな」

「あれもそうだけどさ、こいつら見てると、玄関の隅っことかにひっそり佇んでいるやつを思い出すよ」

白いヒョロヒョロの頭を足で小突きながら、白糸台が答える。

「あれって後ろ足が異様に発達してるあれ?」

「そうそう。翅のないあれ」

「川魚の主なエネルギー源となってるあれか」

「光には鈍いくせに触覚は異様に敏感で……」

「一度飛び跳ねだすとそのランダムすぎる動きに、見てるこっちがパニックに陥るという」

「「カマドウマ」」

「無害なはずなのになんでかあれは恐怖の対象だなあ。異様なフォルムから来るのかね? なんだか襲ってきそうで怖いんだよなあ、事実飛び跳ねるし」

「腐肉喰いなのがいけないのかねえ」

「ハリガネムシの寄生対象なのも良くないねえ」


あらかた生き残りを処理した中島敦と白糸台は、タケミナカタ達を見やった。大きなわんこと土偶の兵士、変な竿を持った青年と、ジャージの女性、それとヒートな神々が一塊になって談笑している。

「諏訪神社の方から来ましたって言ってたけどさあ」

「う、うん」

「あの土偶と狼から察するに、神道系だよなあ。白糸台」

「ジャージの綺麗なお姉さん、ファイヤボールで攻撃してたよなあ」

「監視塔の上での生活が長いからさあ、大概の恐ろしげなものには耐性ができたと思ってたんだけどな」

「いやあ、ちょっと人知の域を超えすぎたな、中島敦」

うんうんと頷きながら中島敦はちょっと離れた所で止まっているホープスターを視線に捉えた。

「あのガトリングガンおじさんもなあ」

「いつもだったら、あのおじさん達見て、びっくり何だろうなあ」


瀬蓮張と開發恵ちゃんも大活躍だったのだ。瀬蓮はガトリングガンを雄叫びと共に発射して、次々にヒョロヒョロを蹂躙していたのだ。恵ちゃんは声援を送っていただけだけど。

普段だったら、瀬蓮の大活躍が異様に思えたのだろうけど、それを上回ったのが自称諏訪神社の方から来た一行だった。さらにその上をいっていたのが蛭子の娘であった。


「空飛んでた娘が8課のコなんだろ?」

デ・ニーロ(ニール)が蛭子の娘って言ってたな」

「あのコが来なかったら、派出所壊滅だったな」

ジェットスーツで滑空する姿はかっこよかったなあと中島敦は思う。同じことを白糸台も考えていたようだ。あの危機的状況を一瞬で覆したのだ。派出所勤務の警官隊のヒルヒルを見る視線が妙に暖かい。

「ガン・フーはしないんですか?」

「ガン・フーねえ。どっちかというと我々は、マイケル・マン派だからなあ。マガジン交換3秒で済ますとか、そういう玄人好みなアクションで魅せる感じだから。あんまりガン・フー方面は明るくないんだよ」

大国主がヒルヒルに笑いながら答えた。

「まあそうですよね。『ヒート』を実践している時点で気づくべきでした」

「まあ、確かに神様連中が非常に趣味的な姿で顕現してるってのは、なんとなくモヤモヤするのかも知れんね。君の伴侶の和三盆なら、こんなのが神様だとはってツッコむところだろうからな」

「は、伴侶っおお⁉」

「おや、違ったのかい。とても仲良しに見えたけどね」

「確かに普通は『時計仕掛けのオレンジ』ごっこはしないよな」

タケミナカタがさわやかに言い放った。

「いや、伴侶って訳では無いんですけど、ワサワサは身構えないで話せるというか、関係はディープな私の話に付き合ってくれるありがたい人というくらいですよ。と、とてもは、伴侶だなんて、そんなハズバンドだなんて、そんな夫婦漫才だなんて、そんな相思相愛だなんて、とてもとても。どちらかというとバディって感じ、そうそう、バディですよ。

『狼 男たちの挽歌・最終章』のジェフリーとリーとか、『仮面ライダー』の本郷と滝とか、『犬神家の一族』の金田一と等々力とか、『CURE』の高部と間宮……それよりは高部と佐久間かな? そんな感じだと思うんですけど……あれ? 例えが変でしたかね?」

タケミナカタが苦笑いする。

釣られて笑いかけたヒルヒルの顔が急にシリアスに豹変した。


『高エネルギー体を検知』

義肢というか外骨格のAIが警告を発した。モニター上、樹海の奥に赤い点滅が表示されている。


ヒルヒルが大真面目に叫ぶ。

「来ます、来ます、今度は中くらいのが」

だが、悲しいかな、派出所には和三郎も、田部サンも居なかった。

そう、ツッコミを入れてくれる人が此処には居ないのだっ!

タケミナカタも鳰鳥もきょとんとしている。白糸台と中島敦は小説系には強いのだが、特撮ものには点で弱かった。やっぱりきょとんとしている。

ここは、なにかもっとポピュラーなことを言うべきだった。いや、普通に報告するだけで良かったのだ。

その時、ヒルヒルはオロカメンが涙を流しながら

「オロカモノメ…」

と自身を否定する幻を見ていた。後ろには連合正義軍を引き連れている。

「ああ、『ザ・ムーン』の方だった」


「来ます、来ますから、『ザ・ムーン』って流れがさっぱり分からんぞ。おおかた、面白いこと言ったと思ったら、誰も知らなくてオロカメンの幻覚でも見たんだろう」

聞き慣れた声が後ろからした。ヒルヒルはおもむろに振り返る。

「YAH YAH YAH」

「『振り返ればやつがいる』って、その連想の力はもっと他で使ってくださいよ。ほんとにヒルヒルはヒルコの中のポンコツ娘だな」

「ワサワサっ!」

ヒルヒルが振り返った先には褐色の肌の腰痛持ちな医者の姿はなく、ようやく派出所にたどり着いた8課一行の姿があった。


ヒルヒルの最後のセリフは『帰ってきたウルトラマン』が元ネタです。

オロカメンは笑い仮面の逆ですね。


ガン・フーに関してはいろいろ調査中、その過程で『カンフー スタントマン』というドキュメンタリーを鑑賞。これが香港映画の隆盛を知っていると非常に切ない。ショウブラザースとゴールデン・ハーベストは、放漫経営とかいろんな理由で次々と無くなっていく。これって香港を屈服させようという中国政府の陰謀じゃねえかと深読みしてしまうくらい、現状香港映画界は厳しいってのが、淡々と語られていきます。

この後ジャッキー・チェンの最新作『ライドオン』を鑑賞したわけです。「カンフー スタントマン」にはジャッキーは肖像権使用の関係で出てこないんですよ。インタビューはちゃんとしたらしいんだけど。中国はドキュメンタリー映画の価値が相当低いらしく、本作の予算ではジャッキーのロイヤリティを払えなかったため、ジャッキーのインタビューシーンはカットされているそうです。その辺を踏まえて「ライドオン」を観ると、これってジャッキーの「カンフー スタントマン」へのアンサーなんじゃね? そう思ってしまうくらい、もうもうなんか知らないけど、どうでもいいシーンでじわじわと落涙してしまうという現象に襲われておりました。

「ライドオン」鑑賞前に必ず「カンフースタントマン」を鑑賞することを強く、強くお勧めします。

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