68 リンちゃん 道を切り拓く
本栖派出所攻防戦4
2024/07/02 後半加筆。
2024/08/08 気になった処を少し修正。
「大きな力が来ましてよ」
アラクネーがケンゾーに囁く。
「激しい衝撃がくるみたい。みんな構えて」
国道139号線の向こうに見えていた白い塊。よく見ればもわもわと隙間なく密接した白いヒョロヒョロが道を横断している。その白いヒョロヒョロがぼぼんと風船のように弾けた。爆風がごおおっとハイエースを揺るがした。
「ヒルヒルが『今日は大勝利である!』って、大見得切ってるよ」
ケンゾーがガルムとのシンクロで状況を伝えてくれる。先ほどの衝撃でケンゾーとリンは、信玄餅のきな粉で黄色くなっていた。
「るー」
粉粉になってしまったので、リンちゃんは少ししょんぼりとした声を上げた。
「そんじゃ、ヒョロヒョロ第2陣が来る前に派出所まで行きますか」
田部サンの号令でハイエースが再び動き出した。
たんたんたたん。
アラクネーが衛星巨砲の攻撃を免れたヒョロヒョロ残党を撃ち取っていく。
「ありゃりゃ、向こう側へ渡りたいけど、ヒルヒルが道をえぐっちゃってるよ」
国道139号線はヒルヒルの放った衛星巨砲で抉られてしまい、向こう側へ渡るのが難しくなっていた。
ぴょこんと窓から顔を出したリンちゃんが、状況を見て破顔する。窓からそのまま外へ飛び出していく。
「るるっるるー」
リンちゃんはバラバラになったヒョロヒョロの骸を、ぽいぽいとハイエースの前に放り投げていく。みるみるうちにヒョロヒョロ骸が敷き詰められた、即席舗装道路が出来上がった。
不安定ながらも向こう側へと渡る算段がついて、カデちゃん操るハイエースは何とか向こう側へ。
その際、ヒルヒルの衛星巨砲が穿った、樹海までの巨大な破壊口を
「これはすごい」
と公安8課のみんなで堪能したのだった。
後は派出所まで進むのみ。
「これ、現場調査する必要あります?」
和三郎が疑問を投げる。
「確かにそうだねえ」
田部サンがまたウイルキンソンでせき込んだ。
「まずは明神様達と合流しよう」
公安8課のハイエースは国道139号線をひた走る。
なんにもないのに、ふっとんだ。
いいぞ、いいぞ、いいぞ。
空飛ぶ娘、白いの、ヒョロヒョロの、吹き飛ばした。
すごくすてきで、おもしろい。
いいぞ、いいぞ、すごくいいぞ。
ガルム達は衛星巨砲の一撃に大喜びしている。
ヒルヒルはタケミナカタ達の許へとゆっくりと降り立った。
「結界はすでに役に立ってはいなかったようだな」
衛星巨砲が穿ったコンクリート塀を貫通した大きな渠を眺めながら、タケミナカタがつぶやく。
「そのようであるの。ヒョロヒョロの出処は概ね潰せたようじゃな」
鳰鳥が風にあおられたキャップを押さえながら答える。
微かにたんたんたたたんと銃声が聞こえる。アラクネーが天井に鎮座するハイエースが渠を横断している。その姿を視認したヒルヒルが大きく手を振った。
「だいぶやりすぎちゃったみたい……ね」
「ふむ。何もしなかったら、後ろのお仲間たちは全滅だっただろうな。これはまあ、これでアリなのではないか」
大国主がヴァル・キルマーで答える。
「そんじゃあ、残党の処理と行きましょうか」
ヒルヒルがにっこりとほほ笑んだ。
やっと樹海に到着ですが、当初の目的の現地調査は意味をなさないような
急激な状況の変化ですね。