表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 本栖湖派出所攻防戦
67/164

65 ヒルヒル 交流と直流でぶっ飛ぶ

本栖派出所攻防戦3


2024/06/25 Thunderstruckの流れ出すタイミングを変更。

本栖派出所に近づくには国道139号線をだらだらっと進むしかない。ヒョロヒョロをアラクネーがスコープで捉えられる距離まで近づいた。ヒョロヒョロ達は139号線を横切りながら、派出所に向かっている。このまま進むとヒョロヒョロ大行進の横っ腹にツッコむ形になる。

「もうすぐこちらも接敵だねえ」

田部サンが何本目かわからないウイルキンソンでやっぱりせき込む。

「数が多すぎて白い塊になってるって」

ケンゾーがガルムとアラクネーとのシンクロで得た情報を告げる。こちらも今日何個目になるかわからない信玄餅に黒蜜ときな粉を混ぜている。るるーのリンちゃんはケンゾーの隣で、やっぱり信玄餅をほおばってモチャモチャ口を動かしている。口の周りは黒蜜ときな粉がべったりだ。「るー」ってにんまり笑うんじゃないよ。あんたら、どんだけサービスエリアで信玄餅を購入したんだよ。

「いったん止めるっス。なんか道の先で白いのが見えてるっすよ」

カデちゃんがハイエースを止めた。フロントガラス越しに覗き込んだ。国道139号線の先、木々の間から白いヒョロヒョロが派出所を目指して進撃しているのが確認できた。

「あらま、ほんとに白い塊ね」

和三郎が驚いて声を上げた。

「これは多勢に無勢だ。ほんとに止められるんでしょうか」

いつになく不安そうにヒルヒルがつぶやいた。心なしかぷるぷると震えている。和三郎は拳を握り、ヒルヒルに声をかけた。

「お前には7号機があるじゃないか!」

はっとしたヒルヒルが大声で叫んだ。

「そうだあっ、ヒルヒルには7号機がある(ピコーンピコーン)!」

いつの間にか釈迦堂遺跡博物館で購入していたしゃかちゃんの根付を持って、腕を前にかざしている。

「うちら独立幻野党じゃないからね。ヒルヒルは幻の水葉月の真似が上手くなったねえ。そんで7号機は

切り札になりそうなの?」

「ドカベンの岩鬼! 結構いい仕事すると思います。ここで使うのがいいかなあ? 田部サンはどう思います?」

「うーん、まだ何かしら起きそうな気はするんだけどね。派出所壊滅はいたたまれないから、ここで使ってしまおうか」

「ガッチャバグース!」

「それの元ネタはって話なら聞かんぞ」

「えええーっ、なんでですかー、聞いてくださいよー」

「『新造人間キャシャーン』のアンドロ軍団のヤルッツェ・ブラッキン!な。大元はハイルヒットラー!なんだけどさ」

「ぷーっ」

ヒルヒルがぶんむくれる。和三郎はハイエースから降りると、荷物を下ろすために後ろへと歩き出した。

和三郎は『7号機』とでかでかと表記があるコントラバスケースをずりずりと路面に降ろした。

「ヒルヒル! これ結構重いんだけど、何が入ってるの? まさかクラスター爆弾じゃないよね」

「違いますよー。そんな物騒なもんじゃないです」

和三郎の後を追ってヒルヒルが駆け付けた。


コントラバスケースを開けると、なにやら得体のしれないアタッチメントが内包されている。ネック部分に収められていた両脚はなんだこりゃ? ジェット機の翼がそのままくっついたみたいなものだった。ヒルヒルはためらうことなく両脚を外して、翼みたいな7号機脚部を装着した。羽織っていたジャージを脱ぎ捨てる。下にはボディラインがはっきりわかるボディスーツを着用していた。ケースに残っているのは、両腕を突き刺すソケット状の腕の挿入口だった。ここに両腕を差し込むと義肢は起動するようだ。

ヒルヒルは翼のついた脚を人魚の様に折りたたんで座り直す。和三郎を見つめながら、両腕を前へ突き出した。

「うーんと両腕外してください!」

「えー、自分でできるだろう」

「両腕同時に使うタイプだから自分じゃできないんですう」

「いやいや、ジュラルミンケースの5号の時に、一瞬で両腕外してたじゃないか」

「ええーいいじゃないですかあ。この間も外してくれたじゃないですか」

「いやあ、あの時はヒルヒル落ち込んでたし、手が拳骨の5号だったから……」

「だから、両腕突っ込まないと起動できないんです。外してくださいな」

「じゃあみんな待たせてもしょうがないし、うん、しょうがないもんな」

「はいな。両腕で起動しなくちゃいけないし、時間もないから、うん! しょうがないですよね!」

「うん。しょうがない、しょうがないことなんだ」

和三郎は自分に言い聞かせてかるようにしょうがないを繰り返しながら、ヒルヒルの脇を探った。

「うひゃあい」

ヒルヒルがのけ反る。

探る。

「ひょおお」

探る。

「いあああああ」

探る。

「にゃふふうう」

和三郎はちょっとというかかなり楽しかった。

ばしゅん。両腕がぽろりと外れた。ナノカーボンの真っ黒い付け根が顔を見せた。相変わらずなんだかうごうごと蠢いている。

しばらく脱力していたヒルヒルは頭をプルプル振ると、おもむろに両腕をソケットに差し込んだ。差し込む際にちょっとだけ和三郎をにらみつける。和三郎はちょっとドキッとした。


義肢が起動準備に入る。


すると何だか聞いたことのあるギターのリフが聞こえてきた。義肢にはスピーカーが内蔵されているらしい。アンガス・ヤングの特徴的なギターリフだ!

義肢装具士さん(おじちゃん)にお願いしてたんですよ」

「え? おじちゃん?」

疾走感のある(イカした)曲でにかっ飛びたい!」


がこんとコントラバスの上部に内蔵されていた背面部が起き上がり、ヒルヒルの身体を包み込んだ。それまではケースに内蔵されて見えなかった背面部に巨大なジェットノズルとよくわからない避雷針的なものが中央から伸びているのが確認できた。さらに右肩には何やら砲塔が伸びているのが見て取れた。ヒルヒルが起き上がったので、前面部には両腕を差し込んだ義肢の先端にこれまたジェットノズルが装備されているのが露になった。ジェットノズルとは別に義肢が2本生えていた。

「7号機 対地上空爆用義肢起動しまーす」

ヒルヒルが間の抜けた声でヤバそうな義肢名を宣言する。

ギターにドラム、ベースといろんな音が重なって厚みを増していく。盛り上がり始めたところで、


…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。


低いうなり音を上げて義肢というか、もはや外骨格な代物が起動する。お約束の手の甲に三つ柏な家紋が光り輝いた。それと同時にジェットノズルが起動する。両腕と背中の3点でバランスを取りながら、ヒルヒルの身体が空中に浮きあがる。

空中でギターのリフに合わせて、ヒルヒルがダックウォークを決める。

ボン・スコットに代わってボーカルを担当するブライアン・ジョンソンのボーカルが雄叫ぶ。

和三郎は

「AC/DCの『Thunderstruck』とはナイスな選曲だよ」

とにんまりした。


ごおおおおおおっ。

「We Salute You!」

叫び声と共に勢いよく急上昇したヒルヒルは、白い塊目指して飛び出していった。

「それは悪魔(for)(those)招待状(about rock)なんだけどなあ」

和三郎は煙草に火をつけた。

空飛ぶジェットスーツ!

元ネタはこれです。

https://gravity.co/

いろいろ疾走感のある曲ってのを考えたんですよ。

最終候補は

the peggies「サマラブ超特急」

Toto「ラヴァーズ・イン・ザ・ナイト(Lovers In The Night)」

グリーン・デイ「バスケット・ケース」

最終的にこれに落ち着いたという。

AC/DCの『Thunderstruck』

https://www.youtube.com/watch?v=v2AC41dglnM

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ