64 アラクネー たんたんたたんと胸を撃つ音に高鳴る
本栖派出所攻防戦2
「ガルム達が接敵したよ。戦力差圧倒的に不利」
ケンゾーが信玄餅に黒蜜を絡めながら謡うように答えた。信玄餅を口に放り込みもちもちと噛み締めると、車窓から顔を出して
「蜘蛛姉ぇ、見えた?」
と、アラクネーに声をかける。
たたたん。
H&Kが火を噴いた。しばらく射撃体勢の後、アラクネーが器用に車窓を覗き込みサムズアップする。
「丸見えよ。スコープが真っ白くなったので、一瞬戸惑ったくらいにね」
一般車を迂回させる封鎖地点を過ぎて少し経っていた。この地点から白いヒョロヒョロの群れを確認できた。現場の本栖派出所まであと少しだ。
「続けて撃っても良いか知らん?」
車上にてアラクネーがアサルトライフルを構え直しながら呟いた。
召喚んだモンスターと召喚者には意思疎通のパスが通るらしい。ケンゾーが了承の念を送ったのだろう。車の上から軽快な射撃音が聞こえてきた。
「ガルム達は大喜びでヒョロヒョロを狩りまくってるね。アラクネーもスコープ見なくても、的に当て放題みたい」
ケンゾーが今日、何個めになるのかわからない信玄餅を開封しながら教えてくれた。
「ということはヒョロヒョロがうじゃうじゃってことだね」
「諏訪のヒート軍団は無事、樹海に着いたんだろうか」
田部サンが心配はしていないが、動向は知っておきたいようで思案気に呟いた。
「ああガルム達が言うには、土の人間と一緒に戦ってるって」
「土の人間?」
「縦と矛持ってるって。土偶かなあ? あと人間が花火撃ってるって。これは警官たちの事かな」
「土偶が何かわからんが、派出所はなんとか持ちこたえているみたいだね」
田部サンがウイルキンソンのジンジャーを飲んでせき込んだ。
「こんだけの大攻勢なのに、自衛隊は参戦しないの?」
和三郎は田部サンに質問した。
「自衛隊はねえ、手伝ってもらうのにはいろいろクリアしないといけないハードルがいくつもあってね。最初っからお願いされてりゃ、出張ってきやすいんだけど。今回みたいな緊急事態となると、まあ対応が遅くなるよね。知事が救助要請出すのと違うからさ。ドンパチやっちゃうでしょ。そうすると誰がケツ持ちするんだとか、予算はどこからとかね」
「大変ですねえ。緊急事態なのに出遅れちゃうなんて。そんな大変な中に我々も行くわけですか」
和三郎がちょっと溜息を吐いた。
「ヒルヒル。ヒョロヒョロ大量発生中らしいけど、7号機で対応できるの?」
「うん、大丈V!」
「シュワちゃんかよっ!」
マガジンを交換してアラクネーはライフルを構え直した。
たんたんたたたん。
アラクネーは知らぬうちに鼻歌を歌っている。
たんたんたたたん。
アラクネーの鼻歌は「サンダーソニア」です。
「Hey! Say! JUMP - サンダーソニア [15th Anniversary LIVE TOUR 2022-2023]」
https://www.youtube.com/watch?v=FI7dDYZSKOk




