62 ケンゾー お約束キャラを呼び出す その2
あれもやりたい、これもやりたいとあふれてくるのだけど、言葉に変換がついてこない。
頭の悪さにもどかしく思う。
「アラクネー カモン!」
ケンゾーが普通に名前を呼んだ。
パリンと割れた円錐の先端から、8本の歩脚の先端を覗かせて、するするとアラクネーが姿を現した。
「わたしは蛇じゃないのよ」
たたんとハイエースの屋根の上に降り立ちながら、アラクネーが微笑んだ。
「元ネタ知ってるのか? 適当に言ったんだよな」
和三郎が突っこむ。
「さあ? お兄さんはパン猪狩」
「そうそう、弟はショパン猪狩、縦笛吹く方な。じゃなくて、なんで召喚されてきたモンスターが『三蛇調教』知っているんだよ。九九が正しく言えないマツダマンと同じ事務所にいて、ディベート得意な理論家肌のクセに天然ボケというギフト持ちの彼では無いんだよ」
「それは若い猪狩ね。HiHi Jets」
アラクネーが鼻で笑いながら答える。
「ショパン猪狩といえば東京コミック・ショー!」
ヒルヒルに火が入ってしまった。
「ハートに火をつけてじゃないんだからさ。しかし、ヒルヒルは好き嫌いがないよな」
「妹のリリー猪狩が日本初の女子プロレスラーなんですよ、そもそも日本での女子プロレスの始まりは、ガーター・マッチから始まったと言ってもかご……」
ヒルヒルの熱い語りが始まった。
「レモンちゃん、あれをまた貸してくれないかしら」
「蜘蛛姉ぇ、カデちゃんって呼んでよ。うん、わかったあれね」
カデちゃんはアラクネーにH&K HK91を手渡した。
すちゃっとアラクネーがHK91を一瞬構えて脱力する。
「これは良いものね」
アラクネーがにんまり笑った。
「おお、見えてきた見えてきた」
甚五の視界に、白いヒョロヒョロに囲まれた本栖湖の派出所が目に入ってきた。
「おうおう、塀から湖にかけて、こちらも大渋滞じゃな」
鳰鳥がどこからともなく禿たちを召喚する。
「結界はなんとかもっているようだが、危なっかしいな」
大国主と出早雄はS660を降りて、アサルトライフルを構え直した。
ユニカーの荷台にはXM556を構えて瀬蓮張がにやにやと、派出所に殺到する白いにょろにょろを見ている。甚五は黐竿をひょんひゅんとしならせていた。
タケミナカタはジャケットのポッケをまさぐって、オオヤマツミにもらったちっちゃな土偶を鷲掴みにして取り出した。一個を指でつまむと、目の前にぽいぽいと投げ始める。すべてを投げ終わったタケミナカタは様子を見るようにじっと立ち尽くしていた。
ユニカーの運転席から半身を乗り出した恵ちゃんが楽しそうに笑う。
先ほど投げた土偶達の周りの土がにょこにょこと盛り上がりだした。ちっちゃな土偶はもりもりと大きく成長し、縦と矛を構えた兵士の土偶へと変貌した。
ちっちゃな土偶が大きくなったのが気に入らなかったのか、白いヒョロヒョロ達はようやくタケミナカタ達を認識したようだ。
兵士の土偶は一斉に縦と矛を構えて臨戦態勢を取る。K-POPアイドルもかくやというシンクロの高さを見せながら、じゃりっじゃりっと歩を進めた。
「よし、行こうか」
タケミナカタが声を上げると、兵士の土偶は一斉に白いヒョロヒョロに襲い掛かった。
その頃、先行したガルム達は大喜びで駆け回っていた。
いいぞ、いいぞ、いいぞ!
ぼくらは駆ける。車の間をぎゅんぎゅん抜けて、駆けていく。
びゅんびゅん。風が追いかけてくる。
いいぞ、いいぞ、いいぞ、すごくいいぞ!
ケンゾのお願い、二度目も頼まれた。
いいぞ、いいぞ、いいぞ。
白いヒョロヒョロってなにかな?
まっすぐ走ったらもうすぐ見えてくるよ
いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞっ。
みえてきた。途端に僕たちは楽しくなった。
いいぞ、いいぞ、すごくいいぞ!
ケンゾのお願い
おもしろいな、おもしろいな。
結界の前に呆けていた中島敦と白糸台の眼前。
しろいヒョロヒョロが土偶の攻撃で吹き飛ぶのを見た。
というわけで、距離的にも近かったタケミナカタ達が、最初に駆けつけましたよー!
タケミナカタが使役する土偶兵士はお分かりの通り『アルゴ探検隊の大冒険』の骸骨剣士でございます。




