54 鳰鳥姉さんのさかしまの世界
多分おそらく現在、和三郎とヒルヒルにお話しを振ると、
蘊蓄垂れ流すものにしかならない気がしてます。
それならばと他の人たちを掘り起こして行こうかなと。
面白い設定があればそっちに鞍替えして、後々脈絡合わせていこうと思います。
2024/05/24 後半を加筆修正
「まあ、こうなるわいなあ」
鳰鳥は横転した車の中で、にんまりと笑いながら呟いた。
「彼らからみたら、裏切り者でしょうからなあ」
ヴァル・キルマーいや、大国主が返事を返す。
運転席と助手席にいた二人はシートベルトを締めたまま。天地逆転状態、自然と両腕がだらんと垂れた状態のままだった。
後部座席にいた鳥刺青年はゴロゴロ転がった車体と一緒にこねくり回されて、天井に倒れこんでいる。タケミナカタも出早雄も後部座席の天井に倒れていて、ようやく起き上がり始めたところ。
和三郎達よりも先に談合坂を離れた諏訪明神と古の傭兵の呉越同舟パーティー。とっくの昔に青木ヶ原樹海に着いていてもおかしくなかった。しかし、その途中で足止めをされていた。
青木ヶ原樹海第8監視塔に中島敦と白糸台は居た。
「『悪魔のハンマー』でさ、地球衝突軌道に入った彗星がいかほどの破壊を起こすか、科学者が雁首揃えて計算するシーンがあるじゃん」
「ああ、あのアイスに例えて計算するやつだっけ?」
「ホット・ファッジ・サンデー。チョコの掛かった旨そうなやつ」
「火曜日に落ちてくるから、ホット・ファッジ・チューズデーになるんだよな」
「あの計算して想像以上の破壊を巻き起こすことが、徐々に判明していくのがじわじわ来ていいんだよ」
「確かにアクションシーンでもないのに緊張感たまらんよなあ……あん?」
「どうした白糸台?」
「あー、うん……前回に引き続き、我々やばいかも」
白糸台が監視塔から見渡せる、漆黒の樹海の海に点々と現れた白い影に見入っていた。中島敦が非常用ボタンを思い切り叩く。鳴り響く警報音。
「ダメだそれは考えるな中島敦」
「いやだがしかし白糸台。やはり考えてしまうだろあの名文句」
「しかし、ここは階段ではないぞ中島敦」
監視塔にがっがっ、がっ、ががっと衝撃が走った。白い影が数体。監視塔の大きなガラス窓に張り付いている。すぐに防弾ガラスにぴしぴしと罅が入っていく。
ぼぼん。
一瞬空を照らして、第8監視塔が爆発した。
その数瞬後だった。
青木ヶ原樹海に向かう道中、タケミナカタ達が見たこともないアレソレの集団に襲われたのは。
「我は弾かれたからここに居るが、甚五は此処の生まれじゃな。われの都合で長いことつき合わせているがの」
「姉さんの我儘じゃあねえよ。俺も好きで一緒に居るんだ」
「今は禿と甚五だけになってしまったがな、かなりの規模の傭兵というのかえ、それであったわ」
襲撃を受ける少し前。鳰鳥はタケミナカタに自分たちの事を話していた。何かの拍子に元居た世界から弾かれて、この世界にたどり着いたという鳰鳥。鳰鳥は敵討ちの為に茶屋に潜伏していたそうだ。
「それも敵わず、長々と生きているがの」
世界をまたいだ影響なのか、鳰鳥は齢を重ねることが無くなったのだそうだ。
タケミナカタは驚いていた。
「世界をまたぐとはな。まったく稀有な経験だな。我らは神として生まれたからなあ、逆に当たり前すぎて、この世界の理については疎いのかもしれんな」
樹海の遺跡の処遇についての見解の相違はあるが、似たもの同士ではあるかもしれない。
敵対して銃撃戦までしたというのに、車内の雰囲気は悪くはなかった。
そこへ現れたのが、樹海の囲みを破ったアレソレだった。
あばらが浮いた細長い身体から、ひょろひょろと華奢に見える、これまた細長い手足が生えたアレソレ。
白い細長い身体。道路のわきからワラワラとわいてきた。
「あれはなんだ? 見たことがないぞ」
タケミナカタが声を上げたのと同時に、ひょろひょろの白いアレソレの腕の一振りでハイエースは道をゴロゴロと転がされてしまった。ぼこぼこに壊れて車輪を上に向けた状態でハイエースはとどまっていた。その周りをひょろひょろの白いのが囲みだす。
「やはりこいつらはあれでしょうな」
なんとかシートベルトを外して天井へ降り立ち、鳰鳥がさかしまから戻るのを手伝いながら、大国主がつぶやく。
「面妖な姿じゃな。あれもあれ、遺跡のアレソレじゃろうな」
息を吹き返したタケミナカタと出早雄は銃のグリップを握り、甚五は黐竿を構えた。
「どうにも樹海にはいかせたく無いようじゃの」
鳰鳥はにまりと笑い、手のひらに火の玉を生み出した。
ちょっと中途半端なので、加筆予定です。
中島敦と白糸台が話している『悪魔のハンマー』はラリー・ニーヴンとジェリー・パーネルの著したSFパニック巨編です。彗星が地球を直撃ではなく掠めたんだったかな。人類を壊滅寸前まで追い込む天災の発生前から、発生後までを丁寧に描いていく傑作ですね。
人肉食うキリスト教系カルト集団が発生するんだけど、この小説でほんと宗教はロクなもんじゃないと自分は再確認しましたよ。