44 和三郎 頭がジャングル日和になる
ここまでノンストップストック無しで思いつくまま書いてきたのですが、
頭がついていかなくなったというか、このままいくと段取りすっ飛ばしてしまいそうな勢い
だった(鈴鹿三姉弟の登場などが良い例)ので、頭を冷やすというか、冷静になるためのエピですね。
といいながらも、色々ぶっこんでるきらいはありますが。
2024/05/14 記憶違い。北野刑事を村長刑事に修正。後書きも修正。
2024/09/13 連のエピソードを追加。そうだったのね。
白糸台は中島敦と富士吉田警察署の近く、大鵬食事処に居た。普段は常駐している本栖湖派出所近くでご飯は済ませるのだが、監視塔破壊事件の顛末などの聴取で富士吉田警察署へ来ていたのだ。
二人ともラーメンと半チャーハンを頼んでいた。
「監視塔急ピッチで改修されたな」
「監視塔、ユニット単位とは知らなかったな」
破壊された14、15監視塔だが、内側から爆発する感じで壊されていた。
爆ぜたというのがふさわしいか。
瓦礫はすぐさま撤去された。監視塔は黒川紀章もびっくり、中銀カプセルタワービル同様のユニットのような造りになっていて、塀の上にそのままスポッと固定して、交換を行うというものだった。
とはいえ、綻んだ結界に果敢に挑むアレソレの攻撃もあって、ちまちまとした攻防はあったようだ。
「監視塔は元に戻ったけど、やっぱりなんだか予定通りに東京から調査に来るらしいじゃないか、中島敦」
「ああ、公安8課と聞いているよ。なんでも県境またいだ途端に、談合坂で騒動起こしたそうだぞ、白糸台」
「それは聞いている。今回の監視塔破壊に関係あると思うか? 中島敦」
「ナニカと銃撃戦になったという話なんだが、情報は全く入ってこないんだよ。白糸台」
しばし、白糸台はもぐもぐとチャーハンを食べる。中島敦はラーメンをすする。
「まあ、どっちみち、現場検証で引っ張り出されるのは、うちらだろうから、憂鬱だなあ、中島敦」
「確かに、面倒だなあ。白糸台」
もぐもぐ、ちゅるちゅる。
二人は同時に大きなため息をついた。
連は大人しい男の子だった。男の子は青い色にしなさいとか、そんなピンク色は女の子の色だからやめなさいとか、そういう男の子だから、女の子だからという決めつけを、両親はしなかった。個人の嗜好を尊重していたので、家族の中では誰も気にしていなかった。だから連のことを女の子っぽいなあと思ったことはない。連はロボットとかも好きだったし、同じように魔法少女も好きだった。ことさら好きだったのがクマのぬいぐるみだった。で、あの子がクマのぬいぐるみを好きなるきっかけが、ロシアの人形アニメ『チェブラーシカ』だった。チェブラーシカのぬいぐるみが欲しくておもちゃ屋へ行ったときに、チェブラーシカのぬいぐるみよりも、連が興味を持ったのがテディベアの一種・チーキーベアだった。連は大きな耳(連が大好きなものは大抵耳が大きい)に、不敵な笑みを湛えたぬいぐるみを、チェブ以上に欲しがった。
「それが偉大なクマのぬいぐるみ作家・鈴鹿連誕生のきっかけだった……なーんてな」
鈴鹿楓は和三郎からの電話を切った。連が会ったであろう人物・取手頼子の名前を告げた途端、さぶろーの雰囲気が変わった。
「ぬいぐるみを覗いたら……ぬいぐるみだった? なに当たり前のこと言ってるんだか」
それにしても連が連絡を絶って、行方不明なのは確定っぽいなあ。性別がトランスフォームしちゃったのも、なんか自分は混じり者だったらしい云々って話で、連にはごまかされちゃったしなあ。でもでも、さぶろーは何か知ってるぽかったなあ。
うちら鈴鹿三姉弟はいったい何に巻き込まれてるんだろうか?
「おお、連の失踪が、あのまがまが? の発端になろうとは」
昔読んだ小説の煽り文句だっけ?
「いやあ、なんで●ンスター・ハンターが関係してんだろ?」
さては家の迷惑なお姉ちゃんであるよ。
「頼子ちゃんと会っていたとはなあ。しかもおかんは佐渡出身だ」
大姉ちゃんは篠田節子も読んでいたかあ。『神鳥イビス』。
「いあー」
「シュタ公は帰りたいと思わないのか?」
「いあいあ」
首を横に振る。シュタ公はこちらが気に入ってるようだ。
「頼子ちゃんは何さしに来ただかな」
頼子から連想される映画、村長刑事のセリフを模して和三郎はつぶやく。まあ、今はとにかく、目の前の調査を完遂しなくてはと考え直す。頼子ちゃんと会っていたのなら、まあクマの世界に連れていかれたのだろうなあと考える。くよくよしてもしょうがない。度津の話も今はいいや。和三郎は気合を入れ直した。
「一緒に行くよ」
タケミナカタは田部サンに答えた。デ・ニーロの格好のまま。
「田部殿の見立て通り、あそこには古きものの施設が埋まっている。何が埋まっているのかはこちらも与り知らぬが、かなり強力な封印が施されていたのだ。それが綻び始めている。これを封印するしないにしろ行かずばなるまい」
「ふーむ。やはり、神様が出向くほどの大事になりましたか」
「質問。自分の認識だと、富士の樹海、青木ヶ原樹海だっけ? あそこって自殺の名所で、幽霊なんかの
出没地点で、新興宗教がたくさんある。なんとなーく、胡散臭く怪しい場所というものだった。ところが、みんなの話していることを聞くと、怪しいを通り越して危険な場所として語られているよね。これは真実は隠蔽されて、俺が知らなかっただけ?」
和三郎が前々から感じていた記憶違いについて質問してきた。
「自殺の名所は初めて聞いたな。樹海に関してはどういううわさが流布されているかはわからないけどね。まあ、富士文明があったというのは文書にも残されているけど、あれは偽書的な噂を流して、信ぴょう性は著しく貶めたりとか、確かに情報操作はしているよ」
だから、アレソレに関係した者の認識と、一般人の認識は大きく隔たりがある。ということらしい。自分が気にしすぎなのだろうか、認識とか潜在意識の差っていうのが、どうにも目の前にちらつく。クソ阿弥陀如来は召喚んだものの強い想念に準拠してた。
青木ヶ原樹海に対する自分と周囲の認識のズレも、想念とか潜在意識と関係しているのだろうか。
タケミナカタはヒルヒルに何やら話しかけている。
最初は明るく対応していたヒルヒルが、だんだんとどんよりしていく。
身体の中心から真っ黒いものは生み出されて、ヒルヒルの身体に広がっていく。
和三郎は慌てて声をかけた。
村長刑事はハナ肇が演じてましたな。秋田出身の友人が「野生の証明」の話になると、決まって村長刑事の物まねをしていたのでつい。ちなみに「あおいふぐ」「?」「あおいふぐ着たおとごのひど」までがワンセットです。