43 恵ちゃん 未だ合流できず、和三郎 いろいろリンクする
あーはっはははは。
筆が滑るぞ。変な方向に。
たまらなく面白いぞ。
2024/05/22 加筆したわー
2024/06/17 再び加筆しとぁー
2024/09/13 わっははは。鈴鹿家長女は鈴鹿楓に統一。初登場時は“蘭”だったわー。
「ふ、封鎖ぁああ?」
開發恵は大声を上げた。
運転席の瀬蓮張は微動だにせず、飄々とした顔でいる。
水門ニック研究所の研究員・開發恵。公安8課を追いかけるように彼女も青木ヶ原樹海を目指してていた。愛車ホープスター・ユニカー。ホープスター・ユニカーのトラックタイプなのだが、こいつは現存していない。写真で販売されていたよってのが確認できる、今となっては幻の軽トラックなのである。開發恵所有するユニカーは側はユニカーのままだが、エンジンなどの足回りは最新のものに全部交換されている。なんちゃってユニカーではあるが、開發恵はこの車を偉く気に入っていた。このユニカーを駆って快調に距離を進めていたのだが、談合坂サービスエリアに近づいた所で渋滞に巻き込まれてつまづいた。
「談合坂のサービスエリアで何か、ひと騒動起きているようです。高速道路警察隊も慌てふためいてますな、大月からやってきてはいるようですが、なんだかサービスエリアに入れなくてお困りの様です」
「あとちょっと、ほんのちょっとなのになあっ」
開發恵が後楽園ホールのプロレスファン宜しくどこどこどこと地団太を踏む。
「あっ!」
「恵様、それはおよしになっていただけると、瀬蓮は非常に嬉しいのですが」
「いやいやいや、積んでるよね、あいつ」
「恵様、嘘でもここは高速道路でございます。道交法違反になりますが……」
「無問題。エンジン載せ替えてる」
開發恵はマッドネスの「シティ・イン・シティ」を鼻歌で歌いながら、荷台へと上がる。荷台に固定されていたのが、ホンダのモトコンポだった。49CCのエンジン部分がどでかいエンジンに変わっている。出力を上げたため、いろんなところのバランスがいじられている。フォルムはモトコンポだが、中身は大型バイクである。
開發恵はモトコンポを荷台から降ろすとヘルメットをかぶった。
「ユニカーの方は任せた」
「仕方ありませんね」
瀬蓮が少々呆れキミに答えた。
どるるっとエンジンをかけると恐ろしい加速で、モトコンポは渋滞で立ち止まっている車の間をぬいぬいと進んでいった。
「はい、鈴鹿です」
『サブロー? お姉ちゃん知らない?』
「え? お姉ちゃん? あ、お兄ちゃんのことか。慣れないなあ。えーと、家にいないの? お姉ちゃんのスマホからかけて来たから、てっきり近くにいると思ったんだけど」
電話に出たのは長女の楓だった。
「愛しの弟から麗しの妹へとトランスフォームした、妹? 弟? どっちだ? まあいいや、様子見に来たら、スマホ忘れてでかけちゃったみたいでさ。いつまでたっても戻ってこないし、最新の架電履歴に軒並みかけて安否確認してたわけ」
俺の兄貴である鈴鹿連は、ある時を境にお姉さんになった。
「女性っぽいとは言われるよ。見た目も華奢だし、女の子みたいな顔立ちだしね。クマ作って売るのを生業にしているから、どっちつかずな格好もしてたわけだし。なんなら、女装してもあんまり違和感なかったでしょ? いやまあ本物の女性には負けちゃうけどさ」
線が細く華奢な体躯故(鈴鹿家はどうもひょろ長いらしい)か、トランスジェンダーっぽいところはあったが、ほんとにトランスジェンダーだったわけではないらしい。
で、ある日、目が覚めたらほんとに女性になっていたというのだ。タイで工事したとかそういうことは全くなく。
「さぶろー、やばいよ。俺、ほんとに女の子になっちゃった!」
と電話をかけてきたときは驚いた。慌てて兄貴のマンションへ行ったら、なんだか知らない女の子が、客間で女の子座りしていたのだ。それが兄貴だと気づくのにしばし時間が必要だった。何が原因かさっぱり分からんとのことだったが、きっかけらしいきっかけは変な女の子の依頼で、チーキーベアの作成を請け負ったくらいしかないと言っていた。
『なんかクマ完成したから、それをお客さんが取りに来るって言ってたんだよね。なのにもぬけの殻』
「大きい姉ちゃん。確認なんだけど、そのお客さんの名前判る?」
『ちょっと待って。えーとね、あった
取手頼子
ってカレンダーに書いてあるよー』
チーキーベアだよ、チーキーベア。このわざとらしい符号は何だ? なんで資料見た段階で、いやいや教団で気づかなかったんだ、俺。
「シュタ公は知ってたのか?」
和三郎の肩に乗って事情を聴いていたシュタ公が済まなそうに首を横に振る。
だよなあ、こいつらは悪いことはできない。
俺、お姉ちゃんとどんな話したっけ? 思い出せ、思い出せ。いやはや朧だ、記憶に霞がかかってる。
「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」
『さぶろー、何言ってるかわからないよー』
「大きい姉ちゃん。ちょっと確認。家って両親は地方出身者だっけ?」
『うーん? 確かパパンは東京生まれの東京育ちだったね。おかんは確か地方出身だったと思う』
「どこかわかる?」
『そうだ、朱鷺の保護センターがあるところだよ。昔さあ、朱鷺が人を襲う小説読んで、無茶苦茶怖かったんで覚えてる』
「そうか……度津の……者だったか」
『なーに? さっきからさぶろー変だぞー。今のはルーシー・リューみたいだし』
「いやいや、服部半蔵の刀なんか持ってないよ」
『ははは。じゃあ、さぶろーもお姉ちゃんがどこ行ったかしらないのね?』
なんかほかにもいろいろ話した気がするが、全部忘れてしまった。
いつ電話を切ったのだろうか?
おそらく連兄ぃ、いや連姉ぇは今現在、この世界線には居ないと思われる。
連ちゃんやシュタ公や頼子ちゃんのクマ問題。
鳰鳥&甚五の動向。
諏訪のヒート軍団の動向。
樹海の白糸台と中島敦君。
いまだみんなに合流できない開發恵ちゃん。
冷静に考えてどうやって収拾するのかな?