33 和三郎と信玄餅と鳥黐とニール・マッコーリー
ということで鳥刺投入です。
国枝史郎はクリアだ。
あとは虫太郎案件だ!
「いざ鳥刺が参って候
鳥はいぬかや大鳥は
ハアほいのホイ」
EXPASA談合坂の裏側というか、鬱蒼と茂る林の中から、なんとも珍妙な唄が聞こえてきた。鯉の柄のアフロシャツに半ズボンの若者が森の中にいる。
辺りには武装した男達の死体が累々とある。どうやらこの若者を害しようと迫った者達が返り討ちにあったようだ。若者が手に持ってびゅんびゅんと先端をしならせているのは、黐竿と呼ばれるものだった。竿の先端に鳥黐をつけて、獲物をくっつけて捕らえる。鳥刺の必須アイテムだ。鷹狩に使われる鷹の為に、餌用の小鳥を取ることを生業として者も多く、餌差、餌差、餌刺とも呼ばれていた。現在は鳥黐を使っての狩猟は禁止されている。
「ふうん、この御仁達は何様なのだろうかね。訳も言わずに突然襲い掛かられたら、こちとらだって防戦もしようってもんだ」
まだ、息の有る男がいたようだ。若者はスタスタと何気ない足取りで生き残った男に近づいて、男の首をくるるんと捻った。
ごぼぼ。
男は口から血を吐いて絶命する。飛び散った血糊が若者のシャツにかかった。若者は手の甲でシャツのよごれを拭い、顔に近づけて匂いを嗅いだ。
「生物を殺すっていいものさね。ピクピクと動く柔かい肌、生臭い血の暖か味、これじゃ殺生は止められねえ訳さ」
鳥刺の若者はEXPASA談合坂を目指して、スタスタと歩き始めた。
「いざ鳥刺が参って候
鳥はいぬかや大鳥は
ハアほいのホイ」
和三郎達はようやく談合坂サービスエリアに到着した。昔は上りも下りも一緒のサービスエリアだったので、食堂などは非常に混雑していた。現在は上りと下りで別々のエリアに施設がある。立派なレストランは上りにしかない。下りはフードコートになっている。いろいろな屋台が出店していて、おいしそうな匂いを漂わせている。施設の中に入った和三郎達はフードコートを目指した。イートインスペースを囲むように、様々なファーストフード店が設けられている。
「和洋折衷。選り取り見取りだね」
イートインスペースで席を確保した後、
「じゃあ、好きな物買ってきて、ここに戻ってくるように」
ということで、みんな散り散りに食べたいものの許へと急いだ。
みんなでワイワイ食べているところに、見慣れぬ男が近づいてきた。
和三郎達が座る席の隣に、どかっと座りコーヒーを飲み始めた。
最初に気が付いたのはヒルヒルだった。目を見開いてじっと男を見つめている。その視線をたどった和三郎は二度見した。松竹新喜劇張りの完璧な二度見だった。
隣の席には黒いスーツにベスト、白いワイシャツ、腕にはデジタルタイメックス。無精ひげのようでいてきちんと整えられた髭面な男がいた。
和三郎はすぐに視線をヒルヒルに戻す。ヒルヒルは和三郎を見て大きく頷くと大きく息を吸い込んだ。
「「ニール・マッコーリー!!」」
二人は声を合わせて叫んだ。ケンゾーとリンちゃんはきょとんとしている。カデちゃんがやれやれと言った感じで、隣のブースを見て、椅子の上で軽く飛び跳ねた。
「ま、マイケル・マン監督の傑作『ヒート』、1995年当時のロバート・デ・ニーロっす!」
そう、隣のブースに座ったのは『ヒート』出演時のロバート・デ・ニーロ。銀行強盗のリーダー、ニール・マッコーリーだった。ニールが和三郎達に軽く会釈を返す。
「だ、誰だあんた?」
ニール・マッコーリーが談合坂でコーヒーなんか飲む訳がない。こりゃ、アレソレの類だと思い直した和三郎が尋ねた。
ニールは映画同様に少し頸を傾げて溜息をついた後で口を開いた。
「諏訪神社の方から来ました」
「ぎゃーっっ! 声が声が」
ヒルヒルが目を潤ませる。和三郎も少し興奮気味。ふたりは立ち上がって、相手を指差しながら叫んだ。
「津嘉山正種!!」
「そこかよっ! もーっといっぱい突っ込むとこ、あんでしょうがっ」
カデちゃんが田中邦衛風にツッコミを入れた。
ケンゾーとリンちゃんとシュタ公は信玄餅をもぐもぐと食べた。
最近また『ヒート』を観てしまい。
諏訪神社の方から来た人は「そうだ、デ・ニーロにしよう!」と思いました。
本当はデ・ニーロみたいな人がいいんだろうけど、そのまま出してしまいました。
信玄餅のうんちくが入れられなかった。




