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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 公安8課富士へ
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32 和三郎 ドギー&マギーの境地に

信玄餅とそのインスパイアについて講釈を垂れる予定。

ってやっぱりバカ話しかしねえのかよっ。

「はいもうすぐ神奈川県を抜けて、山梨県に入るっす」

わーい、越境だ、越境だとヒルヒル、るるーとリンちゃん、いあいあとシュタ公。

東京都と神奈川県の県境は小仏トンネル内だったため、表示がわからず知らぬうちに通り過ぎてしまい、シュタ公以下ぶんむくれてしまった。

なんでも県境をジャンプするんだと。県境を通過中、自分はその場にいないのだ、空中に居るのだというのをやりたいらしい。バナナはお菓子ではないと言ったけどさ、修学旅行じゃないんだけどなあ。

そのリベンジを今度は神奈川県と山梨県の県境でやるのだそうだ。


「おそらく旧支配者的なアレソレとのいざこざが待っているのに、ほんとに遠足気分が抜けないんだから、サポートするこっちはテンションダダ下がりっす」

勘解由小路は違う意味でぶんむくれていた。


「でもさあ、『狂気の山脈』は南極じゃない? 富士山も符合するの?」

「さあ? ミスカトニックでアーカムなアレやソレがあるかは別として、似たようなものが富士の樹海に存在してもあんまり驚かないっすねえ。宮下文書的には富士王朝とかのよくわからん高度文明も存在したんでしょ。旧支配者を崇拝してたり、古のものの都市があってもおかしくないですよ。あそこはほんとにやばいですから。じゃなきゃ高くて分厚い塀で囲ったりしませんって」

「マンハッタン島丸ごと刑務所みたいになってるってことだよね?」

「そそ。臭いものには蓋じゃないけど、妖怪魑魅魍魎の類は囲って閉じ込めて放置ってやつです。おそらく今回の監視塔爆破もそんなに大事になる前に収拾しようとしてるっすよ」

「うまくいけばいいけどさ。てけりりさんなんかが出てきたらそうも言ってられないんじゃない?」

「出ますかねえ?」

「出てほしくないけど、流れ的には出てきそうな流れじゃない? これで出てこなかったら、シュタ公のびびり損だよな」

「てけり てけり」

シュタ公が両腕で肩を抱いて、慄いたふりをする。

「シュタ公にヒルヒル、ほうら県境の標識見えてきたぞ」


「おおー、みんなタイミング併せて、せーの」

シュタ公、ヒルヒル、リンちゃんが車内でぴょんと飛んだ。

「県境を越えたぞーっ!」

「いるるるるる~~」

ヒルヒルとリンちゃんが大声を上げた。シュタ公は小さくこぶしを握ってYES!のポーズである。ほんとに口を閉じていたら、清楚系なのになあと、和三郎は再度思うのだった。後部座席から顔を出したヒルヒルが、下から見上げる格好で、なによー、文句ある? という目線で見つめてくる。

清楚系美人なヒルヒルにじっっと見られた和三郎、途端に動揺し始めた。

「ほ、ほうら、もうすぐサービスエリアだぞ」

和三郎柄にもなくどぎまぎしてしまった。

そんな和三郎の様子を横目で見ながら、カデちゃんはにしししと笑うのだった。

ああ、サービスエリアにつかなかった。

桔梗信玄餅と金精軒信玄餅、大風呂敷、あやめ餅、きな粉餅とかいろいろ。

まるでラーメン二郎かよという感じでいろいろあるのよねえ。

今のところ、まったく小栗虫太郎的な展開も、国枝史郎的展開も皆無なのですよ。

後先考えずに謎の探検家とか混入しようか知らん。 

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