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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 公安8課富士へ
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30 和三郎 確かに競馬場は右に見えたと喜ぶ

自動車で現地へ向かいます。

急いで行動していないのは、ほかの部署が先んじて出張っているからでしょうな。

のんびりしてますね。

与太話エピなので興味ない方はすっ飛ばしてください。多分、伏線的なものは無いと思います。たぶん。


2024/04/19

兄貴関連の描写を加筆

新大久保から中央自動車道を通って目的地、富士の樹海を目指すのだが。


「右に見える競馬場 左はビール工場って歌の通りだな」

助手席に座った和三郎が感想を述べる。

「ビール工場の最寄り駅はどこか知ってるっすか?」

「そりゃ府中駅だろ」

「西武多摩川線だと是政なんですよ」

「是政かあ。あいつずっと泣いてたけど大丈夫かね?」

「申請して団体は畳んじゃったみたいですよ。バカ息子たちは良からぬ動きをしているらしいっす」

「息子たちは軍三さんの足元にも及ばないと、嘆いてたもんな」

「もうあそこじゃ、アブダクションは起こらないでしょ。安心、安心」

「いあっ」

フロントガラスにかじりついていたシュタ公が合の手を入れる。

「シュタ公も気にしてたのか」

「いあ?」

そういうわけではないらしいな。


競馬場を抜けて、多摩川を越える。

「二子玉川って昔は、何にもなかったのになあ。今じゃブランディングされて、大変な場所になってるじゃん。中流のクセに上流階級ぶってるとか言われてるけどさ。なんか、それは非常にわかるというか、共感できるんだけどさ。あそこって、三越と東急ハンズ以外になんかあったっけ?」

「いぬたまとねこたまがあったじゃないですか」

「ああ、あったなあ。動物ふれあいパークの先駆けだ。あと、光線銃撃ちあうゲーム施設があったと思うんだけどさ」

「それはQ-ZARっすね。ナムコ・ワンダーエッグにあったっす」

「おおー。それ題材で特撮もの作ってない? 海外と合作だと思うんだけど」

「なんだろう? 知らないっす『アストロショーグン』じゃないっすか?」

「いやあ、そんな名作とは違うと思うよ。エキスプロだったかコスモプロが下請けで、着ぐるみ作っていてさ。うちのあにぇ……兄がそこのプロダクションに行ったときに見せられたっていうのを思い出した」

「へー。お兄さんは造形関係なんすか?」

「うん、クマ作家。これじゃわかんないか。テディベア作って売ってる。作家先生だよ、日本テディベア協会の会員だね」

「ああ、だから召喚んじゃったんですね、シュタ公」

「ああ、なるほど、似てるって言ってたし、そうかもね。テディベアの中でもチーキーベアは好きだったからな。無意識のうちに反応してたのかもしれない」

「御仏アブダクションが一瞬だけ、ベア化したのって、案外、和三郎さんのせいかもしれないっすね」

「いやいや、俺にそんな力はないよ」

などとカデちゃんと他愛のない話をしていたら、何が琴線に触れたのか、ヒルヒルが後部座席から身を乗り出してきた。

「エキスプロとコスモプロって、怪獣怪人造形の老舗じゃないですか。そもそもの発端が、一番最初のゴジラ辺りまで遡るんですよ。なんと初代ゴジラーーあの凶悪な貌のやつですーーの造形に、エキスプロの八木社長の親父さんと叔父さんの八木兄弟が参加してるんですよ。

またですね、武蔵野美術学校、今の武蔵野美術大学ですね、ここ出身の人間が、なぜかこの時期、東宝の映画の美術スタッフとして参加してるんです。『ゴジラの逆襲』では今じゃ韓国彫刻界の先駆者として名を馳せる権鎮圭が美術スタッフとして参加してたり、そういう絡みから成田亨も参加してて、そっから例の銀色の巨人が生まれたわけですよ。その中に後にコスモプロを立ちあげた三上陸男も参加してたんですね。スーパーマリオラマとして知られる『Xボンバー』を作った人なんですよ」

「つうか、いつにも増して饒舌だな。『Xボンバー』は知ってる。これにインスパイアされてクイーンのギタリストにして物理学者のブライアン・メイが『無敵艦隊スターフリート』のタイトルでミニアルバムを発表してる」

これ、俺がキング・クリムゾンでヒーバーしちゃったときみたいだな。ヒルヒルってヤバくない?

「主題歌はエアロスミス初来日の時に前座も務めたBOW WOWが担当してます。『ソルジャー・イン・ザ・スペース』! これカッコいいんですよね!コスモプロと共同で『Xボンバー』制作したのがじんプロダクションで、このじんプロダクションがまたまた謎の多い会社でしてね。なぜかイタリアで大人気『炎の超人メガロマン』とかの製作に携わっていたプロダクションです。それから、凄まじく早く打ち切りになったことが話題にもなった手塚治虫原作の……」

「いあっいあっ!」

それまで黙っていた、シュタ公がヒルヒルに右ストレートをたしっと入れた。

「あっ…」

我に返ったヒルヒルが、すごすごと後部座席に戻っていく。

和三郎は「たすかったぜ」とばかりに、シュタ公の頭をわしわしするのだった。



趣味的な話を嬉々として書いてしまった。

戦後の東宝特撮黎明期に武蔵野美術大学系の人脈がわらわらと美術スタッフに居たのは、なんかすごいなあと思います。どういう伝手であんだけ集まったのかすげえ気になる。


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