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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
海百合からの挑戦 公安8課富士へ
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28 シュタ公の予知能力

小栗虫太郎の畸獣楽園的展開を考えていたのだけど。

富士の青木ヶ原樹海。

自分の身体の3割くらいあるマウスを駆使して、シュタ公が和三郎に示した地図だ。

青木ヶ原樹海に何がある?

「いあっ いあっ」

シュタ公はいろいろ喋る。

「てぃけり しゅた いあっ」

身振り手振りで説明をしているのだが、如何せん和三郎はまったくわからない。シャーペンを持たせて、紙を与えたが、ペンをうまく扱えないのか、よくわからない抽象画が出現するのみだった。

「エスチャーっ! とか叫びたくなるな。俺は凸凹大学校の校長かよっ」

「あいやい あいやい」

なんでわからんのだとシュタ公はその場で地団太を踏む。


「あらま、どこで耳にしたの? 情報早いわね」

佐々門姉さんが和三郎のモニターを見て反応した。

「これはシュタ公が見つけてきて、俺に説明するんですけど、どうにもクマの言葉はわかんなくて、困ってたところです」

シュタ公は話の分かる人間が来たと言わんばかりに、シャーペンを両腕で持つと、モニターに映った樹海を指差した。

「てぃけり てぃ、けり」

「よくわかったわね、シュタ公ちゃん。ここで事件が起きたのは確かよ」

「事件って?」


和三郎の質問に佐々門姉さんが、緊急時管内放送用のスピーカーを指差す。


『静岡県警富士吉田署より連絡。青木ヶ原樹海第14監視塔が22時10分に原因不明の出火により爆発した模様。樹海内からの攻撃ではない模様。詳細はサーバー上のデータベースにて確認のこと』


富士の樹海を囲うように設置された監視塔が破壊されたという、緊急連絡だった。

「シュタ公はこれを教えたがってたのか?」

「いあっ いあっ!……てぃけり」

シュタ公はどや顔をした後で、ほかにも伝えることがあるのだというように言葉を繋げた。

「てぃけり? どこかで聞いたような」


青木ヶ原樹海。


活火山だった富士山がどろどろと溶岩を垂れ流して、地面を覆った上に木が生い茂ってできている森である。下が溶岩なんで、ある程度成長した木はきちんとした根が張れずに、自身の重さで自壊してしまう。故に倒木も多く、それでもわさわさと木が生い茂っていて人を拒む地帯が富士の裾野に広がっている。


「おまけに、我々が扱っているアレやソレや未確認な生き物までうようよいる。危険地帯だね。」


あれ?そうだったっけ。磁石が効かないとか自殺の名所だとか、新興宗教団体がいっぱいあるよといった、優しいエピソード満載の場所だと思っていたけど。実はそんな恐ろしいところだったとは、情報統制でもしてたのかね。


「ひょっとしてテケリ・リ?」

仮眠室で仮眠中だったヒルヒルが起きだしてきた。寝起きのため上下スエットのジャージでポニーテールを揺らしながらやって来た。違うところも揺れているが極力見ないようにする。

「それはショゴ……山脈の玉虫色のでっかいスライムですね」

「いあっ! いあっ! ふんぐー」

興奮気味にシュタ公が答える。

佐々門姉さんは頭を抱えた。

「ヤバいなあ。サン値削られないようにしろよ」

佐々門姉さんは憐れむ顔で、和三郎を見た。

「え、まじ? アノ神話のアレやソレやは、空想の産物じゃなかったんですか?」

佐々門姉さんはうなずいた。隣でジャージのヒルヒルが可哀そうにという顔をしている。


「ひょっとして、俺が担当?」

佐々門姉さんが大きく頷く。ヒルヒルがご愁傷様という顔をする。

「いや、ヒルヒルはバディだから一緒だよ。まだ、アレなスライムと決まったわけではないし、別のアレソレかもしれないしね」

和三郎の慰めはあまり慰めにはなってない。ヒルヒルは落胆したままだった。

「宇宙的恐怖な方々に対抗する世界線が見えないですよ。でも、玉虫色は旧支配者ではないか。だけど、下手すると蛭子命も眷属とか言い出しかねないですよねー」

「ははは、蛭子が神になれなかったのは、既に旧支配者の系列(先祖返りかね)だったから、日乃本の国の神様認定は受けられなかったとか?」

「うわあああ、ありそうですね」

ヒルヒルが頭を抱える。


富士山の麓って超古代文明とかなかったか? あと国枝史郎の小説の困ったときの富士山文化圏登場、本栖湖の謎の城・水城とか、なぜか新興宗教団体が多いとか、甲府星人とかなんかヤバいねえ。サン値削られる未来しか見えないな。

和三郎は、デスクの上で小躍りするシュタ公を見つめた。

「『いあっ』っていつも言ってて、コズミックホラー感あるなと思ってたけどさ」

当然、事件を予知したシュタ公に注目が行く。

「アカシックレコード覗けたりしてな」

「いああー」

少し得意げなシュタ公が胸を張る。

いや、ほんとシュタ公って何者よ?


チーキーベアの世界から紛れ込んだだけじゃないのかね?

っていうかクマのぬいぐるみの世界って、ロマンだなあ。



いやはや、コスミックホラーになってきましたよ。這いよる混沌さまではなく、ショゴスな方たちがやってきました。さあ、どうなるんでしょうか? ラブクラフト様の知識なんてニャル子さん読んだくらいしかないですぞ! ほんとどうなるんでしょう?

私もさっぱりわかりません。

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