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25 和三郎 やにさがる

まったく何も考えずにクマ投入。

おもしろそうだったんで、つい。


2024/04/19&04/22

必要に迫られ、和三郎と兄の会話挿入。

突然嵐の如く現れた生きているクマのぬいぐるみ。

ようやく8課に戻ってきた和三郎は、肩に乗せたぬいぐるみをうれしそうに眺めていた。


「いあっ いあっ」

和三郎の肩に乗ってたたずむぬいぐるみが声を上げる。

「お前は田神悠宇か、はたまた大作少年かよっ」

言われたぬいぐるみは意味が分からない。ちょこんと和三郎の右肩に座った。


和三郎は動くぬいぐるみを見ても全く動じなかった。

「どうせあれだろう、軍三さんの気持ちがぶれて、世界線が撓んだ時に、頼子さんの世界からはじき出されてきたんだろう」

「いあああ」

ぬいぐるみは大きく頷いた。言葉は理解しているようだ。

「おれもチーキーベアー好きだからな、そんな気持ちに惹かれて呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃんだったんだろ」

「いああ!」

図星らしい。


興味本位でヒルヒルが丸善の魚肉ソーセージをぬいぐるみに差し出した。ぬいぐるみは器用にソーセージを受け取ると、左右についてる金具=クリップを噛み千切ると、器用にピロピロとフィルムを剥き。わしわしとソーセージをほおばった。

「あ、食べるんだ」

ヒルヒルがうれしそうに反応する。


深淵(ぬいぐるみ)じゃあ、アレなんで、今日からお前はシュタ公な」


「なんでそんな残念な名前付けるんですか!」

ヒルヒルが抗議してきた。

「だって耳にタグが付いてるじゃん。だからシュタ公」

「シュタイフ製のくまだったの? それにしても安直すぎじゃないですかっ!」


ぬいぐるみはソーセージを食べ終えて、おもむろに和三郎の肩の上で立ち上がった。

「しゅた!」

名前が気に入ったのか、シュタ公の表情が心なしか笑顔に見えた。


「うそー、そんな名前でいいの?」

「いあっ いあっ」

シュタ公は大きく頷いた。


「ええーっ!」

ヒルヒルはとっても残念そうに声を上げた。


「その、シュタ公だっけ? そのぬいぐるみはどうするの?」

ケンゾーが尋ねてきた。

「うーん、物の怪っちゃあ物の怪だからなあ。妖怪退治が任務の8課からしたら、討伐対象なんだろうけど……佐々門さん、こいつどうしましょう?」


「どうしたもこうしたも、退治する気ないだろうに。和三郎はまんざらでもないんだろ?」

「ま、まあね」


深夜。久しぶりに和三郎はアパートへと帰った。一人暮らし。

「ほうれ、シュタ公。ようこそわが家へ」

シュタ公は8畳の洋室、テレビモニターの前に置かれたテーブルの上にぴょんと飛び降りた。

「いあっ」

和三郎はおもむろにスマホを取り出すと、どこかに連絡する。

「いーあっ いーあっ」

シュタ公はテーブルの上を探索し始めた。

「あ、兄……お姉ちゃん。

慣れないよー、慣れるわけないじゃん。呼び方変えたって、兄貴は兄貴なんでさ」

和三郎はビデオ通話に切り替えて、シュタ公をカメラのレンズに収めた。

「いあっ」

シュタ公がレンズを覗き込む。

『えーっ なんだよこれ?』

「なんか知らんけどクマの使い魔ができたんでご報告」

『すごいなサブロー!……でもこいつ見覚えがあるな』

「あに、いや、お姉ちゃんの作ったチーキーベアに似てるよな」

『そうかっ! だから見覚えがあったんだ』

「名前はシュタ公っていうんだ」

「いあっ」

「なんだよー、その名前。かわいくなーい」


最近兄だった人がお姉ちゃんになった。シュタ公がその人の作ったクマに似ていたので、繋がりでもあるのかと連絡をしてみた。兄……姉貴に自覚は無いようだ。しかし、このシュタ公とどう接すればいいのやら。30過ぎのおっさん、くまのぬいぐるみの使い魔をゲットである。はたして、このクマはどんな力を秘めているのか? 今はまだ誰も知らない。


おお、このシュタ公との出会いが、あの禍々しい事件の発端になろうとはっ!

くまは何すんだろう?

次こそ、義肢製作所へ行かせたいなあ。

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