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24 和三郎 深淵を覗く

とりあえず、後始末的なエピソードのはず。

死人箱(しびとのはこ)にゃあ十五人――

  よいこらさあ、それからラムが一罎(ひとびん)と!

 残りの奴は酒と悪魔が片附(かたづ)けた――

  よいこらさあ、それからラムが一罎と!」


スティーヴンソン言うところの古い船歌を勝手な抑揚をつけて和三郎が歌う。

歌いながらコントラバスケースに義肢を詰めていく。


「死人箱ならぬコントラバスケースだなあ」


3号コントラバスケースに朽ちた破魔矢射出用義肢を収めていく。収めた傍から、義肢からぽろぽろとパーツが剥離していく。


「破魔矢の威力はすさまじいね」

「対破魔矢用義肢じゃなかったら、一矢射る前に粉々です」

「神様的な加護付き義肢なんでしょ?」

「そう聞いてます。破魔矢を撃てるのは2発ですね、今現在。今回、わたしが角隠し忘れちゃったんで、一矢しか撃てませんでした」

「角隠しって?」

「結婚式で嫉妬深い女性が鬼になるのを防ぐために被ると言われているあれです。ほんとは角隠しで以て神様と交信する方が効率がいいんですよ。今回はワサワサが祓ってくれたので、神様と交信が可能になったんです。そうしたら必要以上に祓われていて、余剰に神様エネルギーが破魔矢に宿ってしまって、一矢が精いっぱいだったんですよ」

「なんかすまんね。しかし、なんで祓いの詞知ってたのか、未だによくわかんないんだよなあ」

「実家は神道と縁があるとかは?」

「いや、無いと思うな。普通の南無阿弥陀仏唱える浄土宗だったと思う。今は念仏唱えて、阿弥陀如来に帰依するのは癪だけどな」

「確かに。チビ如来は笑っちゃいましたけどね」


ワサワサとヒルヒルの前で車が止まった。漆黒に塗装されたトヨタ ハイエースの特別仕様車スーパーGL“DARK PRIME Ⅱである。そういえばバンドマンやってた高橋クンがハイエース使いだったな、などと学生時代を思い出す。バンドマンはモテるらしく、いっつもオーディエンスと一緒に居たっけ。

あとで知ったのだが、高橋クンは来る者は拒まない剛の者だったらしい。当時高橋クンは『ゴーストバスターズ』の二つ名があった。美人だろうがブスだろうが、何でも食べちゃうから、この名がついたらしい。今だと何ハラかにはなるんだろうな。知らんけど。


ハイエースから顔を出したのは、知らない女の子だった。


「初めまして、勘解由小路檸檬です」

「はあ、レモンさん。鈴鹿和三郎です」

「レモンはやめてください。カデちゃんと呼んでね。8課のサポート役になります。いろいろ困ったら連絡してください。

つうわけで、ヒルヒル用のノーマル義肢持ってきたよ」

「わー、助かった。この『いくぞー9番』ではさすがに人がいっぱいいるところでは目立っちゃうと思ってました」

「おおー、山下満州男警部っすね。

三越の屋上から万札ばらまくぜ」


 返事をしたカデちゃんが後部座席からバックを取り出した。バッグから義肢の手足がはみ出している。

「いやいやいやいや、その雑な扱いは無いから。そこだけ猟奇殺人事件になってるでしょ」

「サンタ・サングレぇぇ」

 カデちゃんがおどける。

「そっちよりもエル・トポっしょ」

ヒルヒルが混ぜっ返す。

「あー……ホドロフスキーつながりだよな、うーん……すまん、思いつかん」

和三郎が謝る。

『これは映画だ』でごまかせばよかったのに、とヒルヒルが笑った。ポニーテールが揺れる。


是政はずっと泣いていたが、めんどくさいのでほったらかして帰ってきた。


教団は畳むって言ってたから、宗教関係からは足を洗うんだろうな。などとぼんやり考えながら、車に揺られて帰途に就く。


後部座席でうつらうつらしている和三郎は、膝の上に何かの気配を感じて手をかざした。もふっとした感触を感じて、うっすらと目を開ける。

和三郎の手をはっしとつかむ30センチ大の変なモノが、ガラス玉の眼で見つめ返してきた。


怪物(くま)と闘う者は、その過程で自らが怪物(くま)と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵(ぬいぐるみ)を覗くならば、深淵(ぬいぐるみ)もまた等しくおまえを見返すのだ」


「ニーチェなんかつぶやいて……和三郎さん、それ!」

ヒルヒルが叫ぶ。

ようやく覚醒した和三郎は、自分の手をもてあそぶ、もふもふなチーキーベアをまじまじとみつめた。


「いあっ、いあっ」

チーキーベアが声を上げる。その声はコズミックホラーの香りがしたとか、しなかったとか。


変な船歌は宝島から引用。

えんやらやっとラムが一樽♪が

アニメの「宝島」だったっけ?


20240313

くまのシュタ公、登場。

ほんとはヒルヒルの義肢修理エピを次に書こうと思って

プロット進めていたんだよ。

濃いー義肢装具士登場!とか考えていたんだけど、

なんか面白くなくって。

で、またノリに任せて余計なことをしてしまったのです。

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