18 リンちゃん、天使の翼で舞う
リンちゃん大活躍のまきー
パチッたもん、縮めてパチモン。
人類が空想、妄想した生き物は、100、200、300、いや、それ以上かもしれない。
それを召喚可能にしたマルクト乙式魔導札。
アンジョウ博士が、最初のマルクト乙式魔導札を開発し、ケンゾーがゴブリンのリンを呼び出したのが最初だった。
これを知ったあらゆる秘密の組織が、幾多の試練を乗り越えて、マルクト魔導札の互換亜種魔導札を開発した。亜種にもいろいろあるけれど、公安組織ではそれを総称して亜種、これを行使する者たちを亜種遣いと呼んでいた。
公安8課の亜種遣い撲滅のための戦いは今日も続く。続くったら続く。
「というわけで亜種遣いと戦っているよ。パチモンって説明してないか。あとで教えちゃうよ。こっちが終わったら、教団施設にお邪魔しようと思うんですがよいですか? よいですか、ありがとう。じゃあ、よろしくねー」
ケンゾーは和三郎のケータイに留守電を残してから切った。
前方を見やると路地のコンクリート壁の切れ目から、リンがひょこりと顔を出した。白かったワンピースはところどころ土ぼこりが刷り込まれて汚くなっていた。衝撃波の直撃を受けた頭部からはうっすらと血が滲んでいる。
「不意打ちだったけど、平気?」
リンはるっと大きく頷いた。
「あれはルシファ亜種だね」
「るーっ!」
「ルシファとは、以前やりあったよね」
「るるるる、るーるる」
「そうそう、ズタボロにしてやったね。あれはルシファ亜種だから、楽勝だな」
「るっろろるるっろるー!」
リンは力こぶを作ってみせる。
「やつの衝撃波はひきつけるんで、懲らしめてやりなさい」
「るっ」
水戸黄門的指示をリンに出したケンゾーは、早速さっきよりも目立つ形で、建物から身体を半分ほどさらしてみる。
再びルシファ亜種は大きく口を開き衝撃波を発生させる。
がががりがりりりぃ。
建物壁が抉られていく。
建物が抉られた同タイミングで、高速で躍りかかったリンによってルシファ亜種の翼が引き千切られた。リンは引き千切った翼で以て、ルシファ亜種の隣に突っ立っていた亜種遣いをぶん殴った。
天使の翼がめりりめりめりと鼻の軟骨を砕いていく。亜種遣いはどぶりどぶどぶと大量の鼻血を噴き出した。
「るっるるー♪」
「ドッキリ大成功じゃないんだからさ」
勘解由小路出てくるはずだったんだけどなあ、もうちょっと後のようだ。